親子関係を証明できる書類とは?|外国籍で戸籍謄本がない場合の対応も解説
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令和4年の東京都墨田区の出生者数は2231名、死亡者数は2615名でした。
相続手続きでは、被相続人と相続人の親子関係を証明するため、戸籍謄本等の提出を求められる場合があります。もし相続人と被相続人のどちらか、または両方が外国籍で戸籍がない場合は、出生証明書や宣誓供述書などの代用書面が必要となります。
本コラムでは、相続手続きにおいて必要な親子関係を証明できる書類について、ベリーベスト法律事務所 錦糸町オフィスの弁護士が解説します。
1、親子関係を証明できる書類とは?
遺産相続の手続きや、さまざまな契約手続きにおいては、法律上の親子関係の証明を求められることがあります。
親子関係を証明するためには、戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本(以下「戸籍謄本等」と総称します)のいずれかを用いることが一般的です。
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(1)戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本とは
戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本の概要は以下の通りです。
① 戸籍謄本
戸籍謄本とは、戸籍簿に記載された事項の全部を証明する書類です。正式名称は「戸籍全部事項証明書」といいます。
なお、戸籍簿に記載された事項の一部のみを証明する書類は「戸籍抄本(戸籍個人事項証明書)」と呼ばれます。
相続手続きにおいては、原則として、戸籍抄本ではなく戸籍謄本の提出が必要になります。
② 除籍謄本
全員が除籍となった戸籍は、戸籍簿から除籍簿に移されます。
除籍謄本は、除籍簿に記載された事項の全部を証明する書類です。正式名称は「除籍全部事項証明書」といいます。
③ 改製原戸籍謄本
改製原戸籍謄本とは、戸籍がコンピュータ化されるより前の戸籍簿に記載された事項の全部を証明する書類です。
親子関係は、戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本のいずれかに記載されているため、記載がある書類を提出すれば親子関係を証明することができます。
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(2)相続手続きで必要となる戸籍謄本等のパターン
相続手続きでは、親子関係を証明するために戸籍謄本等の提出が必要となる場合があります。
必要となる戸籍謄本等のパターンは、おおむね以下のいずれかです。① 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等
→相続関係の全体像を確認する必要がある場合に、提出が求められます。
② 被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本等
→被相続人の死亡を確認する必要がある場合に、提出が求められます。
③ 相続人の現在の戸籍謄本
相続人の生存(=相続権を有すること)を確認する必要がある場合に、提出が求められます。
④ 他の親族の戸籍謄本等
→代襲相続によって相続権が移動した場合に、被代襲者の死亡等を確認するために提出が求められます。
2、親子関係を証明できる書類(戸籍謄本等)の取得方法
以下では、相続手続きに必要な戸籍謄本等を取得する方法を解説します。
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(1)市区町村役場の窓口で請求する
もっとも一般的なのが、本籍地の市区町村役場の窓口で戸籍謄本等の交付を請求する方法です。
この場合、所定の様式による申請書を提出するほか、本人確認書類の提示が必要です。
さらに、代理人が請求する場合は委任状が、本人以外の者が請求する場合は本人との続柄が確認できる資料が必要になります。
窓口での交付手数料は、戸籍謄本が450円、除籍謄本と改製原戸籍謄本が750円です。 -
(2)郵送で請求する
戸籍謄本等は、郵送で請求することもできます。
市区町村のウェブサイトなどを参照しながら、戸籍謄本等の交付事務を取り扱う部局に対して申請書類を郵送しましょう。
郵送請求にあたっては、以下の書類が必要になります。- 請求書
- 本人確認書類の写し
- 手数料(定額小為替、普通為替または現金書留)
※戸籍謄本は450円、除籍謄本と改製原戸籍謄本は750円 - 返信用封筒
- 返信用切手
- 委任状(任意代理人が請求する場合)
- 法定代理権を証明する書類(法定代理人が請求する場合)
- 本人との続柄が確認できる資料(本人以外の者が請求する場合)
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(3)マイナンバーカードを利用してコンビニで取得する
戸籍謄本に限り、自治体によってはマイナンバーカードを利用してコンビニで取得できることがあります。
この場合、マイナンバーカードと手数料以外の書類はとくに必要ありません。
戸籍謄本の交付手数料は原則として450円ですが、コンビニ交付の手数料については、特例的に割り引かれている場合もあります。
3、相続手続きで戸籍謄本等が必要になる場面
以下では、相続手続きのうち戸籍謄本等が必要になる場面について、代表的な例を解説します。
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(1)遺産分割調停・審判
遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停・審判を通じて遺産の分け方を決めます。
遺産分割調停では調停委員を介して話し合って合意を目指し、調停不成立となった場合は家庭裁判所が審判を行って遺産分割の方法を決定します。
家庭裁判所に対して遺産分割調停を申し立てる際には、申立書に加えて、相続人の構成に応じた戸籍謄本等の提出が必要となります。
そのほか、相続人全員の住民票または戸籍附票、および遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書・固定資産評価証明書、預貯金通帳の写しまたは残高証明書など)も必要となります。 -
(2)預貯金・有価証券の相続手続き
被相続人の預貯金口座および証券口座は、被相続人が死亡した旨を金融機関に連絡した時点で凍結されます。
その後、金融機関の相続手続きを通じて、預貯金や有価証券が相続人へ引き継がれます。
預貯金および有価証券の相続手続きにあたっては、戸籍謄本等の提出が必要となります。
そのほか、遺産分割の方法に応じて、遺産分割協議書および印鑑登録証明書、調停調書、審判書または遺言書などの提出も必要になります。
具体的な必要書類については金融機関によって運用が異なりますので被相続人口座がある金融機関に確認してください。 -
(3)不動産の相続登記手続き
相続または遺贈によって取得した不動産については、法務局にて所有権移転登記(相続登記)の手続きを行う必要があります。
不動産の相続登記の手続きにあたっては、戸籍謄本等の提出が必要です。
そのほか、被相続人の住民票の除票、不動産を取得する者の住民票の写し、固定資産評価証明書などを提出する必要があります。
不動産の相続登記手続きは、司法書士に依頼すると便利です。
ベリーベスト法律事務所に依頼いただければ、グループ内の司法書士と連携して、相続登記についてもワンストップで対応いたします。 -
(4)相続放棄・限定承認の申述
亡くなった被相続人が多額の借金を負っていた場合などには、相続放棄または限定承認が有力な選択肢となります。
① 相続放棄(民法第939条)
遺産(資産・債務)を一切相続しない意思表示です。各相続人が単独でできます。
② 限定承認(民法第922条)
遺産のうち資産を相続しつつ、債務は資産の限度でのみ相続する意思表示です。相続人全員が行う必要があります。
相続放棄および限定承認を行う際には、家庭裁判所に申述書を提出します。その際、相続人の構成に応じた戸籍謄本等の添付が必要となります。
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(5)相続税の申告
相続財産等の総額が基礎控除額※を超える場合は、相続税の申告が必要です。
※基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数
また、配偶者の税額の軽減や小規模宅地等の特例を利用する場合にも、相続税の申告を行わなければなりません。
相続税の申告にあたっては、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等のほか、相続人全員の現在の戸籍謄本の提出が必要となります。
そのほか、相続の内容によってさまざまな書類が必要になります。
相続税を申告する際には、税理士に依頼することで申告のミスやトラブルを予防できます。
ベリーベスト法律事務所には税理士も在籍しているため、相続税の申告についてもワンストップでサポートすることができます。
4、外国籍で戸籍がない場合に、親子関係を証明する方法は?
通常、外国には、日本のような戸籍制度は存在しません。
したがって、外国籍の方が関与する相続については、戸籍謄本等以外の方法で親子関係を証明する必要があるのです。
具体的には、出生証明書・婚姻証明書・死亡証明書・宣誓供述書などを代用書類として利用することができます。
ただし、外国語で作成される書類については、訳文を添付することも必要になります。
実際に提出すべき書類については、相続手続きを行う金融機関や行政機関などから案内を受けられます。
また、弁護士に依頼していただければ、必要書類の取得をサポートいたします。
5、まとめ
相続手続きにおいて親子関係を証明すべき場合には、戸籍謄本などを提出する必要があります。
外国籍の方については戸籍がないため、出生証明書・婚姻証明書・死亡証明書・宣誓供述書などの書類に訳文を付して代用する必要があります。
ベリーベスト法律事務所では、遺産相続に関するご相談を承っております。
書類のことをはじめとして、相続手続きについて疑問点やお悩みを抱かれている方は、お気軽にベリーベスト法律事務所までご連絡ください。
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