再婚後にも元夫・元妻から子どもの養育費をもらい続けることができる?

2022年01月27日
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再婚後にも元夫・元妻から子どもの養育費をもらい続けることができる?

子連れで再婚をする場合、しばしば問題になるのが、元夫・元妻からもらっていた養育費のその後の扱いです。「再婚をするとこれまでもらっていた養育費は今後もらえなくなる」という話も聞かれます。

では、実際に再婚をしたらこれまでもらっていた養育費はその後なくなるのでしょうか?今回は子連れ再婚を考える方の疑問に、ベリーベスト法律事務所 錦糸町オフィスの弁護士がお答えします。

1、養育費とは?

再婚後における養育費の取り扱いを理解する前提として、まずは養育費の基本的知識について理解しておきましょう。

  1. (1)養育費の支払いは親の義務

    養育費とは、未成熟の子どもの監護や教育のために必要な費用のことで、子どもが経済的・社会的に自立するまでに要する費用、たとえば、衣食住に必要な経費、教育費、医療費などがこれに当たります。

    養育費は、法文上の用語ではありませんが、その根拠条文としては、民法877条にあります。すなわち、「直系血族および兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」(民法877条1項)という条文です。

    親と子は直系の血族にあたりますので、互いに扶養する義務を負います。離婚をして子どもの監護者ではなくなったとしても、子どもの父母であることには変わりはないため、父母は離婚をしたあとも、子どもを扶養する義務があります。

    したがって、離婚後に子どもを育てていく親(監護者)は、他方の親(非監護者)に対して、養育費の請求をすることができます

    養育費に関する決定は、一般的に、離婚に際して行われる当事者双方での話し合いや、当事者同士での話し合いで解決ができない場合には主に調停でなされます。

    「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者(親権者)、父または母と子との面会およびその他の交流(面会交流)、子の監護に要する費用の分担(養育費)その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない」(下線部は筆者による加筆)(民法第766条1項)

    「前項の協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める」(同条2項)
    とあるように、“親権・面会交流・養育費”は子どもの利益を最優先にしながら決めていくことになります

  2. (2)養育費の金額は比較的自由に決定できる

    養育費には法律で決められた支払金額というものはありません。父母双方が納得していれば金額は自由で、養育費の支払いをしないという取り決めも可能です。もし、離婚時に父母において養育費の取り決めをしなかった場合に、離婚をした後で改めて決めることも可能です。

    もっとも、養育費を負担することが親の義務であることは前述のとおりであるところ、その果たすべき義務の具体的内容としては、生活保持義務(養育費の支払義務者と同程度で、かつ文化的な最低限度の生活水準を維持する程度には、絶対的に扶養しなければならない)であるとされています。

    つまり、養育費の金額算定においては、子どもが養育費の支払義務者と同じレベルの生活ができるかどうかが判断基準とされています

    この基準を前提に、裁判所は、子どもを監護する親と他方の親の収入を考慮して、監護されている子どもが養育費の支払義務者と同じレベルの生活ができる程度の養育費のおおよその金額を、「養育費・婚姻費用算定表」として公表しています。

    したがって、離婚時の父母の話し合いや調停においては、この算定表を参考にしながら、養育費の金額が話し合われるのが一般的です。

    ちなみに、養育費の支払期間については、養育費とは未成熟の子どもの監護や教育のために必要な費用であるという定義に伴い、未成熟子が成人に達するときまで支払うとするのが一般的です。

    もっとも、前記のとおり、養育費は子どもが経済的・社会的に自立するまでに要する費用ともいえるので、家庭環境等や資力に応じて、父母の話し合いや調停で個別的に決定することもでき、たとえば、実際に子どもが就職をする直前である高校あるいは大学を卒業するときまでと定めることも少なくありません。

2、再婚後も養育費をもらい続けることはできる?

  1. (1)再婚した場合でも養育費はもらえる

    では、子どもを監護する親が再婚をした場合、監護していない親からもらっていた養育費はその後もらえなくなるのでしょうか?

    子どもの監護者が再婚したとしても、それだけで非監護者が法律上の親でなくなるわけではありません。そのため子に対する扶養義務もなくなりません。

    たとえ子の監護者の再婚相手と子どもが一緒に暮らしていたとしても、後述するように、再婚相手と子どもが養子縁組をすることで法律上の親子関係とならない限りは、再婚相手に子どもの扶養義務はありません。
    したがって、非監護者は監護者に対して、監護者の再婚後も養育費を払い続ける必要があります。

  2. (2)再婚後に子どもと再婚相手との間で養子縁組をすることができる

    子の監護者が再婚をしただけでは、非監護者の子どもに対する養育費の支払義務がなくならないとお伝えしました。では、子どもが監護者の再婚相手と養子縁組をした場合にはどうなるのでしょうか?

    養子縁組とは、法律上の親子関係を作ることです。
    養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組の2種類があります。

    ● 普通養子縁組
    子どもが、非監護者である実父・実母とも法律上の親子関係を保ったまま、監護者の再婚相手を養親として、監護者の再婚相手とも法律上の親子になる手続きです。子どもは血のつながった親と養親という、2組の親を持つことになります。

    ● 特別養子縁組
    子どもが、非監護者である実父・実母との法律上の親子関係を解消し、監護者の再婚相手を養親として、監護者の再婚相手と法律上の親子になる手続きです。普通養子縁組と異なり、子どもの親は養親のみとなります。

  3. (3)再婚後に養子縁組をした場合の養育費の違い

    普通養子縁組と特別養子縁組では、実親との親子関係存続の有無が異なることから、養育費の扱いに大きな違いがあります。

    ● 普通養子縁組
    普通養子縁組の場合、実親との親子関係は解消されないため、「実父・実母(非監護者)」と「養親」の両方が扶養義務を持ちます。
    したがって、監護者の再婚相手と子どもとの養子縁組によって非監護者の扶養義務はなくならず、養育費を払わなくていいとはなりません。

    ただし扶養義務者に順位が生じ、第一次的に子どもと同居している養親、第二次的に非監護者となります。
    したがって、養親に、子どもを養っていくうえで十分な収入や財産があれば、非監護者からの養育費がなくても生活していけるとして、養育費の減額または免除の申し入れをすることは考えられます。

    他方で、養親が働いていないあるいは低収入といった場合には、不足分を補うために第二次的な扶養義務者となった非監護者であっても、子どもに対して十分な養育費を支払う必要があるとされる可能性は高いとも考えられます

    ● 特別養子縁組
    特別養子縁組では、実父・実母(非監護者)との法律上の親子関係が解消されるので、養親だけが子どもに対して扶養義務を負います。
    したがって、非監護者は子どもに対する扶養義務がなくなり、特別養子縁組後の養育費支払の免除の申し入れることができます。

3、再婚を隠して養育費をもらい続けたら返還請求される?

  1. (1)再婚などの事情変更を報告する法的義務はない

    法律では元配偶者に再婚などの事情変更を報告しなければいけないという規定はありません。

    たとえ、子どもと監護者の再婚相手が養子縁組をしても、当該再婚相手に資力があり生活に余裕が生まれたとしても、元の配偶者に対してその旨を報告する義務はないのです。

    もっとも、離婚時に養育費の取り決めをした際、たとえば離婚協議書に「双方、再婚や再婚相手と子どもとの養子縁組、その他収入の変化があった場合には報告する」といったような条項を設けていた場合には、その旨の報告をする必要はあります。

    とはいえ、元配偶者自身から再婚の報告を受けなくても、うわさなどで元配偶者が再婚をしたという事実を知ることがあります。そうなると再婚後に支払っていた養育費の返還を求められるかもしれません。では再婚した事実を元配偶者に黙っていた場合、再婚後に支払っていた養育費の返還要求に応じなければいけないのでしょうか?

  2. (2)養育費の返還は不要

    再婚したことなどを元配偶者に黙っていたとしても、再婚時にさかのぼって養育費を返還する必要はありません。

    養育費は、離婚の際などに、話し合いや調停で決めた合意に基づき支払われています再婚をしただけで、その内容が破棄されることはありません。そのため、養育費の支払いをやめたい場合は、その後の養育費に関する取り決めをし直さなければいけないのです。

    もし元配偶者の再婚を知った他方の元配偶者が、支払うべき養育費を勝手に減額したり、あるいは養育費の支払いをやめた場合、取り決めを記した公正証書や調停条項などがあれば、当該元配偶者が得ている給与を差し押さえるなどして、強制執行により養育費の支払いを受けることが可能です。

    もっとも、養育費に関する取り決めの中で、「子どもの監護者が再婚をした時点から養育費を払わない」など、事前に養育費返還の条件を定めている場合には、返還が必要となりえます。

4、養育費に関する調停など

  1. (1)養育費の請求、増額・減額でもめたら調停・審判

    養育費は、父母自身と子どもの生活に大きく関係するため、金額でもめることが少なくありません。

    具体的な事情としては、前述の内容をふまえれば、離婚時に養育費について取り決めをせずに離婚後に一定の養育費の支払いを求めるケースや、子どもの監護者の再婚や当該再婚相手と子どもが養子縁組をした場合に養育費の減額・免除を求めるケースなどが考えられます。

    養育費の請求や養育費の額の変更は、当事者同士の話し合いで合意ができればそれに越したことはありませんが、話し合いで決着がつかない場合には、次に家庭裁判所の調停で解決をはかります。

    調停では、父母双方が、1名の裁判官および2名以上の調停委員とともに話し合いを行いながら合意を目指しますが、双方が折り合うことができずに調停が不成立となった場合、その後は、家庭裁判所の審判に移行し、裁判官が、一切の事情を考慮して、養育費支払いの有無や養育費の額などを判断することになります。

  2. (2)養育費の減額調停では特に個別事情が重要

    養育費の支払義務者が、子どもの監護者の再婚や当該再婚相手と子どもとの養子縁組を理由に養育費の減額や免除を求めてきた場合には、話し合いや調停で金額変更について検討します。

    調停にて養育費の減額・免除を検討する場合は特に、子どもの監護者の再婚相手に一定の収入があり、それだけで子どもを十分に養っていけるなど、養育費を減額・免除をする明らかな事情がある場合は、養育費の減額・免除が認められる可能性はありますが、養育費の支払義務者の収入状況も考慮した個別的検討がなされるため、専門的知識や判断を要するといえます。

    なお、養育費の減額・免除が調停で決まったときは、調停申立時以降に支払っているもともとの養育費の額と調停で決定した養育費の額との差額につき、返還される可能性はあります。

5、まとめ

再婚をすると今後もらえる養育費はなくなると思っている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、再婚をした場合や再婚相手と子どもが養子縁組をした場合、その他養育費の支払義務者の事情いかんなどによって、養育費の増額・減額・免除の判断はケース・バイ・ケースです

養育費をめぐって元配偶者ともめた場合は、ベリーベスト法律事務 錦糸町オフィスにご相談ください。離婚トラブルの解決実績が豊富な弁護士が相手と話し合い、解決をはかります。お子さんとご家族にとって望ましい結果になるよう最善を尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています