パパ活で妊娠したらどうすべき? 相手に養育費や慰謝料は請求できるのか
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令和5年9月6日、東京都福祉局の女性職員が、知り合った男性から金銭を受け取って食事をする、いわゆる「パパ活」を行っていたとして、減給10分の1(1か月)の懲戒処分を受けたという報道がありました。
「パパ活」とは、女性が経済的に余裕のある男性と食事やデートを行い、その対価として金銭を得る活動のことをいいます。一般的なパパ活では、食事をしたり、物を買ってもらったり、お小遣いをもらったりするだけですが、パパ活の延長でセックスが行われることもあります。そして、セックスの結果、妊娠してしまう可能性もゼロではありません。
もしパパ活で妊娠してしまったら、「相手に対して慰謝料を請求したい」と思われる女性もいるでしょう。また、中絶する場合は中絶費用を、子どもを産んで育てる場合には養育費用を請求することも検討されるかと思われます。
本コラムでは、パパ活で妊娠した場合にまずすべきことや、パパ活相手に対して慰謝料や中絶費用などを請求できるかどうかについて、ベリーベスト法律事務所 錦糸町オフィスの弁護士が解説します。
1、パパ活で妊娠してしまったらまずすべきこと
もしパパ活が原因で妊娠してしまったら、まずは以下のような対応が必要になります。
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(1)病院に行く
妊娠検査薬で陽性反応が出た場合、妊娠している可能性が高いでしょう。
その場合、まずは産婦人科などの病院を受診してください。
病院での検査の結果、妊娠していることが判明した場合には、今後の対応に必要となりますので、必ず診断書をもらってください。
パパ活により妊娠した場合、男性に「妊娠した」と伝えても、すぐには信じてもらえないことが多いといえます。
ひどい場合には「金銭目的でウソを言っている」と思われる可能性もあるので、妊娠の事実を証明するためにも、診断書が必要となるのです。 -
(2)パパの自宅住所や職場の情報などが本当に正しいかを再確認
パパ活相手の男性とは、SNSやマッチングアプリ、パパ活サイトなどを利用して出会うことが多いでしょう。
元々面識がある人ではありませんので、LINEやメールしか連絡先がわからないということもあります。
男性と出会った際に伝えられた自宅や職場の情報が真実であるとは限りませんので、まずは、それらの情報が正しいかどうかを確認することが大切です。
万が一、すべての情報についてウソをつかれており、連絡先もわからないとなれば、相手に対する責任追及や子どもの養育費の請求などもできなくなってしまいます。
そのため、パパ活をする際には、確実に相手と連絡がとれる方法(メール、電話、LINEなど)を確保するとともに相手の名刺や車のナンバーなどを控えておくのが安心です。
これらの情報を確保していれば、弁護士会照会によって、より詳細な相手の情報を確認できる可能性があります。 -
(3)今後の中絶・出産についてパパと相談
パパ活による妊娠が判明した場合には、子どもを産むのか中絶するのかを決めなければなりません。
中絶手術が可能な時期は、母体保護法により妊娠22週未満までと決められています。
そのため、妊娠がわかったらすぐにパパ活をした男性に連絡をして、今後の対応を話し合うようにしましょう。
中絶手術をするためには、中絶同意書に相手の署名やハンコが必要になりますので、病院を受診した際には中絶するかどうかにかかわらず、念のため中絶同意書の用紙をもらっておくことをおすすめします。
2、パパ活を通じた妊娠でも慰謝料請求できる?
以下では、パパ活が原因で妊娠をしてしまった場合、男性に対して慰謝料を請求することができるのかどうかについて解説します。
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(1)基本的には慰謝料請求はできない
パパ活により妊娠をしてしまったとしても、基本的には、パパ活をした男性に対して慰謝料を請求することはできません。
パパ活で性行為をすることに関しては、双方の同意のもとで行われたものと考えられます。
そのため、たとえ妊娠が予期せぬものだったとしても、避妊せずに性行為したこと自体には違法性がないということになるのです。
そして、慰謝料請求をするためには、前提として違法な行為が存在することが条件になります。
したがって、同意に基づく性行為により妊娠したという場合には、原則として慰謝料を請求することはできないのです。
ただし、パパ活相手の男性から、強引に性行為をされたり、睡眠薬を飲まされて性行為をされたりしたような場合には、違法性が存在します。
そのような場合には、慰謝料を請求できる可能性があります。 -
(2)中絶費用の負担を求めることはできる
慰謝料請求はできないとしても、中絶手術をする場合の費用については、パパ活をした男性に負担を求めることができます。
この場合の費用負担は、基本的には双方が折半することになりますが、女性側の資力が乏しいときは、経済的に余裕のある男性側に全額の負担を求めてみてもよいでしょう。
なお、複数の男性とパパ活をしている場合には、お腹の子の父親が誰であるかを特定できない可能性もあります。
そのような場合には、父親である男性に中絶費用の負担を求めることができなくなり、全額を女性が負担して支払わなければならないことに注意してください。 -
(3)パパ活をした男性が既婚者の場合、逆に慰謝料を請求されるリスクもある
パパ活をする場合には、自分が慰謝料を請求される立場になる可能性があることも理解しておかなければなりません。
パパ活相手の男性が既婚者である場合、そのような男性と性行為を行うことは「不貞行為」にあたり、男性の妻から不倫慰謝料の請求を受ける可能性があります。
ただし、不倫慰謝料を請求するには、「既婚者であることを知っていたこと(故意)」または「既婚者であることを知らなかったが、注意すれば知ることができたこと(過失)」が必要になります。
そのため、パパ活サイトなどで初めて知り合った男性であれば、既婚者であることについて故意または過失がなく、慰謝料の支払いを拒否できる可能性があります。
ただし、パパ活の男性から既婚者であることを告げられていたり、結婚指輪をしていることを知っていたりした場合には、故意または過失が認められる可能性があることに注意してください。裁判においても、故意がない・無過失といった主張はなかなか認められにくいです。
3、産んで育てる道を選んだら養育費の請求は可能か?
以下では、中絶ではなく出産することを選択した場合に、パパ活をした男性に対して養育費を請求する方法を解説します。
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(1)養育費を請求するためには認知が必要
パパ活女子がパパ活相手の男性に子どもの養育費を請求するためには、男性から子どもを認知してもらう必要があります。
「認知」とは、婚姻関係にない男女の間で生まれた子どもを、父または母が自分の子どもであると認めることです。
母親は子どもの出産の事実から当然に親子関係が生じますので、認知は、主に父親が自分の子どもであると認める場合に利用される手続きです。
パパ活相手の男性が胎児または生まれた子どもを認知することにより、男性と子どもとの間に法律上の親子関係が生じるため、子どもの養育費を請求することが可能になります。 -
(2)認知をする方法
子どもの認知をしてもらう方法は、主に以下の二種類となります。
① 任意認知
任意認知とは、子どもの父親が自らの意思で父子関係があることを認めて、認知を行う方法です。
パパ活をした男性との話し合いにより任意に認知をしてくれるのであれば、認知届に必要事項を記入して、市区町村役場に提出してもらうことで認知の効果が発生します。
また、子どもが生まれる前に認知をすることもできます。
このような認知を「胎児認知」といいます。
胎児認知も認知を行う父親が認知届を提出する方法で行いますが、その際には母親の同意が必要になります。
② 強制認知
子どもの父親が任意に認知をしてくれないという場合には、強制認知という方法により認知を求めていくことになります。
強制認知の手続きでは「調停前置主義」が採用されているため、裁判の前に、まずは家庭裁判所に認知調停の申立てを行う必要があります。
調停での話し合いの結果、合意が形成された場合には、裁判所による必要な調査が行われた上で、合意による審判により認知の効力が発生します。
もし調停で合意が形成できない場合には、調停不成立になりますので、裁判所に認知の訴えを提起することになります。
裁判ではDNA鑑定が行われ、鑑定によって男性が子どもの血縁上の父親であることが判明したら、認知を認める判決が言い渡されます。
4、弁護士に相談した方がよいケース
以下のようなケースでは、弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)相手の素性を特定して慰謝料や中絶費用の請求をしたいとき
パパ活により妊娠した場合、中絶をするにしても出産をするにしても、今後の対応を話し合う必要がありますので、まずは相手を特定する必要があります。
しかし、パパ活では、SNS、マッチングアプリ、パパ活サイトなどを利用して出会うため、相手の名前や住所などがわからないことも少なくありません。
このようなケースであっても、弁護士であれば相手の電話番号やメールなどから相手を特定することが可能です。
相手に対して慰謝料や中絶費用を請求したいという場合には、まずは弁護士にご相談ください。 -
(2)子どもの認知をしてもらい養育費を請求したいとき
パパ活により知り合った男性は、遊び目的であることも多いため、女性が妊娠したことがわかると、責任を逃れのために着信拒否されたりLINEやSNSをブロックされてしまったりすることもあります。
このような状態では子どもの認知を求めることは困難ですので、強制認知の手続きをとることになります。
しかし、強制認知には、調停、審判、裁判などの複雑な手続きが必要になります。
強制認知を行う際には、法律の専門家である弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士であれば、子どもが生まれた後すぐに強制認知の手続きに着手して、相手に対して子どもの認知を求めていくことができます。
養育費は、子どもの将来の生活費や学費にとって大事なお金であるため、しっかりと請求を行いましょう。
5、まとめ
パパ活で妊娠してしまった場合には、まずはパパ活相手の男性に連絡をして、今後の対応について話し合いを行うことになります。
男性が真剣に対応してくれればよいです、連絡しても無視されるなど不誠実な対応をとられてしまった場合には、弁護士によるサポートが必要になります。
とくに中絶手術をする場合には、期限があるため、早めに対処することが大切です。
パパ活により妊娠してしまいお困りの女性は、まずはベリーベスト法律事務所にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています