もらったお金は返さなくてよい? 返済義務を迫られたらどうすべきか

2021年12月06日
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もらったお金は返さなくてよい? 返済義務を迫られたらどうすべきか

交際中の男女間では、お金の貸し借りや、融通し合うこともあるかもしれません。その場合、交際を終了することになった段階で、相手から以前にもらったお金やプレゼントを返すように要求されるケースがあります。

もらったお金やプレゼントは、一般には返す義務はないのですが、ケースによっては返却の必要性が生じることもあるので注意しましょう。

今回の記事では、交際相手からもらったお金やプレゼントを返すように迫られた場合の対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 錦糸町オフィスの弁護士が解説します。

1、もらったお金やプレゼントを返す義務はある?

交際相手からもらったお金やプレゼントは、交際終了時に返す必要があるのでしょうか。まずは、法律上の基本的なルールを理解しておきましょう。

交際相手からお金やプレゼントをもらった場合、法的には、交際相手との間で「贈与」が行われたことになります(民法第549条)

「贈与」は契約であり、当事者のどちらかが一方的に撤回することはできないのが原則です。

ただし、贈与が契約書などの書面によらない場合については、以下の解除規定が設けられています。

書面によらない贈与の解除
民法第550条……書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。


上記の解除規定では、書面によらない贈与は各当事者が一方的に解除できることを原則としつつも、「履行の終わった部分」については、一方的な解除を認めない旨を定めています。
「履行の終わった」とは、原則的には、動産なら現実に引き渡した状態を、不動産なら登記名義を移転させた状態を指しますが、判例ではゆるやかに解釈されています。

つまり、すでにお金やプレゼントを受け取り済みの場合には、履行が終わっていますので、交際相手が贈与契約を解除することはできないのです。

したがって、仮に交際相手からお金やプレゼントを返すように迫られても、すでにもらった物である以上は、原則として返還する義務はありません

2、もらったお金やプレゼントを返さなければならないケース

例外的に、交際相手からもらったお金やプレゼントを返さなければならないケースもあります。

以下のいずれかに当てはまる場合には、すでにもらったお金やプレゼントであっても、交際相手から返すように迫られれば、それに応じなければならない可能性があります。

  1. (1)贈与の解除条件が成就した場合

    贈与の契約の中では、贈与に関する条件を定めることができます。

    条件には、「停止条件」と「解除条件」の2種類が存在します。

    • 停止条件(民法第127条1項)……成就により、一定の法律効果を発生させる条件
    • 解除条件(民法第127条2項)……成就により、すでに発生している一定の法律効果を消滅させる条件


    上記のうち、交際相手からの贈与に「解除条件」が決められていて、かつ解除条件が成就したケースでは、もらったお金やプレゼントを返さなければならない可能性があります。解除条件が成就したことによって、贈与の法律効果が消滅するため、お金やプレゼントを保持する法律上の原因を失ってしまうからです。

    たとえば、

    • △年△月△日までに就職できなかったら、あげたお金を全額返す
    • 合意によって交際が終了したら、あげたお金を全額返す


    といった内容の合意が、解除条件付の贈与に当たります。

    解除条件の成就によって贈与が取り消された場合、交際相手から不当利得に基づく返還請求(民法第703条、第704条)を受け、お金やプレゼントを返さなければならない可能性があるので注意しましょう

  2. (2)婚約指輪や結納金など

    解除条件付贈与のパターンの一つとして、婚約指輪や結納金の贈与が挙げられます。婚約指輪や結納金は、「相手と結婚すること」を条件として贈与されるものと解するのが一般的です。

    そのため、婚姻届の提出よりも前に婚約指輪や結納金が授受されることが多いでしょう。

    この場合、婚約指輪や結納金の授受を法的に解釈すると、
    「結婚しないことが確定することを解除条件として行われた贈与」
    となります。

    わかりやすく言えば、婚約指輪や結納金を贈与されたとしても、結婚しないことが確定した場合には返さなければならない可能性があるということです

    なお、婚約指輪や結納金の贈与が結婚を条件としていることは、社会通念上承認されていると考えられます。そのため、仮に「結婚しない場合は返す」という明示的な合意がなかったとしても、返還義務が認められる可能性が高いことを知っておきましょう。

  3. (3)錯誤・詐欺・強迫により贈与が行われた場合

    錯誤・詐欺・強迫によって贈与を行った場合は、贈与の意思表示を取り消すことができます(民法第95条第1項、第96条第1項)。

    • 錯誤……贈与の重要な要素について勘違いしていたこと
    • 詐欺……騙されて贈与を行ったこと
    • 強迫……暴行や脅迫によって無理やり贈与をさせられたこと


    男女間の贈与において特に問題になりやすいのは、結婚詐欺などのケースです。

    最初から結婚する意思がないにもかかわらず、あたかもそのつもりがあるかのように装って、相手に大量の金品を貢がせるのは、結婚詐欺師の手口になります。相手としても、将来結婚してくれると思っているからこそお金やプレゼントをあげるのですから、まさに民法上の詐欺に該当するケースであるといえるでしょう。

    また、結婚詐欺による金品の要求については、刑法上の詐欺罪(刑法第246条第1項)として処罰される可能性もあります。

3、相手が「貸しただけだ」と主張してきた場合の反論は?

交際相手に対して渡した金品を返すように要求する際、「貸しただけだから返せ」と主張するケースがあります。

もし交際相手からもらった金品について、「貸しただけだから返せ」と主張された場合は、返還合意についての証拠を示すように求めましょう

金品を(無償で)「貸す」行為は、お金であれば「消費貸借」(民法第587条)、動産であれば「使用貸借」(民法第593条)にそれぞれ該当します。消費貸借・使用貸借のいずれについても、成立には金品の授受のほかに、返還の合意が必要です。

つまり、「渡した物を後日返す」という合意がない限り、消費貸借・使用貸借の終了に基づいて金品の返還を請求することはできません。

交際相手の「貸しただけだから返せ」という主張は、消費貸借・使用貸借の終了に基づく返還請求に当たります。
この場合、返還合意の立証責任は、返還を求める交際相手の側にあります。そのため、交際相手に対して返還合意の証拠を提示するように求めることが、有効な反論になるでしょう。

4、交際相手との金銭トラブルを弁護士に相談すべき理由

交際相手と別れる際には、金銭トラブルが起こりがちです。万が一、交際相手との金銭トラブルに発展してしまった場合には、問題の特性上、弁護士に相談して対応することをおすすめします。

  1. (1)精神的な負担を軽減できる

    交際相手と金銭トラブルに発展するケースでは、交際が暗礁に乗り上げ、事実上破綻していることが多いでしょう。そのような状況で、交際相手と金銭に関する言い争いをするのは、精神的にも大きな負担になりますし、お互い感情的になり、一層解決が困難となる可能性があります。

    弁護士にご依頼いただければ、交際相手とのやり取りはすべて弁護士が代行しますので、交際相手と直接話す必要がありません無用な精神的ストレスを軽減するためにも、弁護士を通じて交際相手と交渉した方が得策といえるでしょう

  2. (2)契約書がないケースが多いため、対応が難しい

    交際している者同士で金品をやり取りする際には、お互いの信頼関係を前提としているため、契約書などを締結しないケースがほとんどです。そのため、実際にはどのような合意があったのか、どのような内容の金品がやり取りされたのかなど、法律関係の肝心な部分が曖昧な場合があります。

    契約書などがない場合、相手からの要求にどこまで応じるべきか、自分はどのように反論すべきかなどを検討する材料が少なく、困難な対応を迫られるケースもあります。弁護士に相談すれば、限られた資料から手がかりを探して、法的な観点から合理的な主張を組み立てられる可能性があります。

    交際相手との金銭トラブルが発生した場合は、まずは弁護士に相談してみましょう。

5、まとめ

交際相手からすでにもらったお金については、交際終了時などに返せと要求されたとしても、原則として返還の義務はありません。しかし、婚約指輪や結納金など、結婚することを前提に贈与された物である場合は、返還義務が生じる可能性があるので注意が必要です。

交際相手との金銭トラブルは、精神的ストレスが大きく、また契約書などの資料も少ないため、複雑な対応が必要です。ベリーベスト法律事務所 錦糸町オフィスでは、交際関係に関するトラブルの解決に優れた弁護士が、円滑・迅速に金銭トラブルを解決に導くため尽力いたします。

交際相手との金銭トラブルなどにお悩みの方は、お早めにベリーベスト法律事務所 錦糸町オフィスへご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています