くじ引きに対する景品表示法の規制|違反した場合の罰則
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くじ引きなどのイベント企画で高額な景品を付ける場合、景品表示法(=景表法)違反にならないか注意が必要です。
景品表示法とは、不当に高額な景品・大げさな表示などで、消費者の適切な選択を妨げることを禁止した法律です。「取引価額が5000円未満であれば、景品はその20倍の金額を超えてはならない」など細かな規制があるため、違反して罰則を受けないよう、事前に把握しておくことが大切です。
この記事では、くじ引きに対する景品表示法上の規制や違反した場合のペナルティなどについて、ベリーベスト法律事務所 錦糸町オフィスの弁護士が解説いたします。
1、くじ引きに対する景品表示法の規制
商品のPRのためのイベントでくじ引きを実施して、景品をプレゼントする場合にどのような規制があるのか、解説します。
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(1)くじ引きに関する規制とは?
くじ引きを実施する際の規制については、景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)に定められています。
本来、事業者は、商品やサービスの質で競争すべきであるにもかかわらず、景品類の提供が過大になってしまうと、景品類の過大競争が行われ商品やサービスの質が低下してしまうおそれがあります。また消費者が過大な景品類にそそのかされて割高な商品やサービスを購入させられてしまうおそれがあるため、これらの弊害を防止するために、景品表示法では景品類の上限などに規制を設けているのです。
くじ引きで景品類をプレゼントする場合には、懸賞に関する規制が適用されることになります。 -
(2)景品類とは?
そもそも景品表示法が適用される場合には、「景品類」を提供することが前提になります。逆にいえば、「景品類」を提供するのでなければ景品表示法の規制は適用されません。
「景品類」とは、次の3つに該当するものを指します。- ① 顧客を誘引するための手段として
- ② 事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する
- ③ 物品、金銭その他の経済上の利益
以下、それぞれ説明します。
① 顧客を誘引するための手段として
「顧客を誘引するための手段として」使われたかどうかに関しては、物品や金銭などを提供した側の主観的な意図や企画の名目がどうであるかは問題にはならず、客観的に判断されるとしています。
たとえば、顧客への感謝を込めたサービスとして行ったくじ引きであっても、客観的には「顧客を誘引するための手段」にあたると判断されることがあります。
また、「顧客を誘引する」とは、新規の顧客の誘引にとどまらず、既存の取引の継続・取引拡大を誘引することも含まれています。
② 事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する
景表法においては、景品類の提供が、「取引に付随して」行われる場合のみが規制の対象になるとしています。
「取引に付随して」とは、「景品類」にあたるかあたらないかを判断するための実務上問題となりやすい重要な要件です。まず、販売や賃貸、クレジットカード会社とその利用者との関係などにおいて取引を行うことを条件として物品などを提供する場合は、「取引に付随」する提供になります。
さらに取引を必ずしも条件としないような場合、たとえば、店舗への入店者に物品などを提供する場合であっても、取引の相手方を主たる対象として行われるため、「取引に付随して」提供することになると考えられています。
逆に、「取引に付随」する提供にあたらないのは、正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益の提供、正常な商慣習に照らしてアフターサービスと認められる経済上の利益の提供、ある取引で2つ以上の商品・サービスを組み合わせて販売している
ことが明らかな場合(いわゆるセット販売)など、取引そのものと捉えられるものです。
③ 物品、金銭その他の経済上の利益
「経済上の利益」とは、消費者からみて通常、対価を支払って手に入れることができるすべてのものをいいます(通常の価格より安く購入できることも「経済上の利益」にあたります)。
なお、モニターへの報酬などのように、仕事の報酬などと認められるときは、「経済上の利益」に該当しません。また、値引やアフターサービスは当該③自体には該当するものの、上記②には該当しないため、「景品類」に該当しないことになります。
もっとも、実務上、「上記②に該当しない値引き」に該当するかどうかは問題になりやすいポイントです。 -
(3)懸賞規制
くじ引きによって景品類を提供する場合のルールは、懸賞規制によって定められています。
懸賞は、商店街やショッピングセンター内の業者など複数の事業者が参加して行う「共同懸賞」と、共同懸賞に該当しない「一般懸賞」に分けられます。
・ 一般懸賞の場合
一般懸賞の場合、懸賞によって提供できる景品類の価額の最高額は、以下の通りです。- ① 取引の価額(通常、景品類の提供を受けるために必要な取引のうち最低の金額)が5000円未満であれば、その20倍の金額を超えてはなりません。
- ② 取引の価額が5000円以上であれば、10万円を超えてはなりません。
たとえば、取引の価額が500円の場合は、最高額として1万円までの景品が付けられます。
さらに、景品類の総額に関する規制もあり、一般懸賞の場合は「懸賞にかかる取引の売上予定総額」の2%までの範囲に収める必要があります。この売上予定総額は、前年度の販売実績や同様の企画を実施した際の販売実績などを参考に合理的に算定しなくてはなりません。
・ 共同懸賞の場合
これに対し、共同懸賞の場合は、取引の価額にかかわらず、最高額は30万円を限度としています。また、景品類の総額について、共同懸賞の場合は「懸賞にかかる取引の売上予定総額」の3%までとされています。
2、景品の提供方法
くじによる場合には懸賞の規制がかかりますが、景品表示法では他にも、来店者全員にプレゼントする場合の総付景品規制もあります。ここでは、「懸賞」や「総付景品」の定義や、総付景品規制のルールについてご説明いたします。
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(1)懸賞とは?
そもそも懸賞とは、
- くじなど偶然性を利用して定める方法
- 特定の行為の優劣・正誤によって定める方法
によって、景品類の提供の相手もしくは提供する景品類の額を定めることです。たとえば、抽選やジャンケンなどによって景品類の提供を定める場合が該当します。
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(2)総付景品とは?
「総付景品」とは、懸賞の方法によらないで提供される景品類をいいます。
具体的には、次のような方法が該当します。- 商品・サービスの購入者全員にもれなく景品類を提供する場合
- 小売店が来店者全員にもれなく景品類を提供する場合
- 商品の申込順または入店の先着順に景品類を提供する場合
ただし、以下は、総付景品規制は適用されないとされています。
- 商品の販売・使用またはサービスの提供のために必要な物品
- 見本などの宣伝用の物品
- 自店および自他共通で使える割引券・金額証
- 開店披露・創業記念などの行事で提供される物品
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(3)総付景品の場合の規制内容
総付景品の場合も、懸賞と同じく景品類の価額について上限があります。総付景品では、取引価額が1000円未満のときは、最高額は200円、1000円以上のときは、取引価額の10分の2までとされています。
3、景品表示法に違反した場合のペナルティ
景品表示法に違反した場合には、どのようなペナルティが課されるのか、解説いたします。
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(1)ペナルティの種類
景品表示法に違反した場合のペナルティとして、大きく
① 措置命令を受けること
② 課徴金納付命令を受けること
③ 適格消費者団体による差し止め
④ 刑事罰
があげられます。 -
(2)① 措置命令
措置命令とは、景品表示法に違反する表示や景品類の提供をする者に対して、消費者庁がそのような広告表示や景品類の提供の停止を命じる措置のことをいいます。特に金銭的な負担は生じませんが、社名が公表されるため、会社のレピュテーションにかかわります。
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(3)② 課徴金納付命令
課徴金納付命令は、消費者庁が一定の要件に従い、違反した事業者に対して金銭的な負担を課すものです。
ただし、この課徴金納付命令は、今回解説している懸賞や総付景品規制といった景品規制に対しては適用されません。課徴金納付命令の対象になるのは、優良誤認表示や有利誤認表示などの表示規制に違反した場合に限定されます。 -
(4)③ 適格消費者団体による差し止め
国による認定を受けた民間の消費者団体が、景品表示法に違反する広告表示の停止を書面で求めることができる制度です。こちらも上記②の表示規制に違反した場合のみが対象になります。
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(5)④ 刑事罰
上記①の措置命令に違反した場合には、事業者(行為者)は2年以下の懲役または300万円以下の罰金に処されます。さらに、法人については3億円以下の罰金の対象となります。
なお、2023年に法改正がされ、施行は2024年11月までになされるものですが、措置命令の有無にかかわらず、優良誤認表示や有利誤認表示といった規制に違反した場合には、それをもって刑事罰が科されるという直罰規定が導入されることになったため注意が必要です。
4、企業法務は弁護士へ相談を
くじ引きなどの懸賞は、身近な販促活動である一方、意外に複雑なルールが定められています。そのため、景品表示法の景品規制などについて不安があれば、企業法務の実績がある弁護士に相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所では、「顧問弁護士に相談したい、でもコストが気になる」場合に最適な月額3980円からの顧問弁護士サービス「リーガルプロテクト」をご用意しています。企業の法務トラブルを未然に防ぎたいとお考えの際は、ぜひご検討ください。
5、まとめ
懸賞企画において、景品表示法に違反するかどうかの判断が難しいケースは少なくありません。顧客サービスの一環として行ったくじ引きが、罰則対象になり企業のイメージダウンにつながってしまうのは避けたいところです。
景品表示法に基づき適切にくじ引きなどの懸賞をするためには、ベリーベスト法律事務所 錦糸町オフィスへご相談ください。当グループには税理士や社会保険労務士も所属しているため、ひとつの窓口でさまざまお悩みへの対応も可能です。まずはお気軽にお問い合わせください。
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