【労働者向け】36協定における休日出勤の取り扱いとは?

2024年07月31日
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【労働者向け】36協定における休日出勤の取り扱いとは?

厚生労働省の統計によると、令和4年に労働基準監督署で取り扱った「賃金不払事案」の件数は、20531件でした。

会社の繁忙期などに、会社から依頼されて休日出勤をすることもあるでしょう。

しかし、会社が労働者に対して休日出勤を命じるためには、36協定とよばれる労使協定の締結と労働基準監督署への届け出が必要となります。また、36協定の締結・届け出があったとしても、割増賃金の支払いが必要になるなどの各種規制があります。

本コラムでお伝えすることは、大きく以下の3つです。
・36協定における休日出勤の取り扱い
・休日出勤した場合の割増手当
・割増手当や休日出勤分の給与の支払いがない場合の対処法

休日出勤の取り扱いについて知りたい方や、休日出勤で会社から割増手当などの支払いがなされていない方に向けて、ベリーベスト法律事務所 錦糸町オフィスの弁護士が解説します。


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1、土曜出勤は休日労働? 休日出勤の定義

労働基準法では、休日出勤はどのように定義されているのでしょうか。以下では、休日出勤に関する基本事項について説明します。

  1. (1)労働基準法上の「休日」の定義

    労働基準法では、少なくとも毎週1日(週休1日原則)または4週を通じて4日以上の休日(変形週休制)を与えなければならないと定められています(労働基準法35条)。このような労働基準法で義務付けられている休日のことを「法定休日」といいます。

    これに対して、会社が労働者に対して任意に与える休日のことを「所定休日」または「法定外休日」といいます。所定休日を設定するかどうかは法律上の義務ではありませんので、会社が自由に決めることができます。

  2. (2)休日出勤とは

    労働基準法上の休日出勤とは、法定休日に働くことをいいます。一般的には、休みの日に働くことはすべて休日出勤と呼ばれるケースが多いですが、労働基準法では、休日出勤は「法定休日」の労働と定義されています。

    では、週休2日制で土日休みとされている会社において、土曜日に出勤をした場合には労働基準法上の休日出勤にあたるのでしょうか。

    このケースでは、就業規則で法定休日がどのように規定されているかによって異なってきます。就業規則で土曜日を法定外休日、日曜日を法定休日と定めていた場合には、土曜日の出勤は、労働基準法上の休日出勤にはあたりません。

    他方、就業規則で明確な規定がない場合には、暦週の後にくる方が法定休日となります(厚生労働省「改正労働基準法に関する質疑応答」(平成21年10月5日))。暦週とは、日曜日から土曜日までの1週間のことで、日曜始まりのため、土日休日の会社では土曜日が法定休日になります。そのため、この場合には土曜日の出勤は、労働基準法上の休日出勤にあたります。

2、36協定と休日出勤の関係

36協定とはどのようなものなのでしょうか。また、36協定と休日出勤にはどのような関係があるのでしょうか。

  1. (1)36協定とは

    36協定とは、「時間外・休日労働に関する協定届」のことを指します。労働基準法36条では、法定労働時間を超える時間外労働などを労働者に命じるためには、労働組合または過半数の労働者を代表する者との間で書面による協定を締結し、労働基準監督署に届け出ることが必要とされています。

    このように労働基準法36条に基づく協定であることから「36協定」と呼ばれています。

  2. (2)36協定と休日出勤との関係

    36協定は、労働者に対して法定労働時間を超える時間外労働を命じる場合だけでなく、休日出勤を命じる場合にも必要になります。

    36協定の締結・届け出をすることなく、労働者に対して休日出勤をさせた場合には、労働基準法違反となり、事業主には6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます(労働基準法109条)。

  3. (3)36協定はどこで確認ができるのか

    会社は、36協定を締結した場合には、以下の方法によって、労働者に周知しなければなりません。

    • 常時各作業場の見やすい場所への掲示または備え付け
    • 書面で労働者に交付する
    • 磁気テープ、磁気ディスクなどに記録し、各事業場に当該記録内容を常時確認できる機器を設置する


    一般的には、休憩室や事務所などへの掲示、社内サーバーへのアップロードなどで対応している企業が多いと思いますので、確認をしてみるとよいでしょう。

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3、注意したい36協定の「特別条項」

36協定の締結・届け出があったとしても、36協定の特別条項に注意が必要です。

  1. (1)36協定の特別条項とは

    36協定を締結・届け出をすることによって、法定労働時間を超える時間外労働や休日出勤が可能になります。しかし、無制限に時間外労働や休日出勤ができるわけではなく、時間外労働の上限は、原則として月45時間・年360時間までとされています。

    もっとも、業務量は常に一定ではなく、時期によっては業務量が2倍、3倍に増加することもあります。そのような場合には、上記の上限規制の範囲内では対応しきれず、業務に支障をきたすおそれが生じます。

    そこで、このような臨時的な特別な事情により、上限規制を超えて労働の必要がある場合に利用されるのが「特別条項付きの36協定」です。

    特別条項付きの36協定を締結・届け出することによって、時間外労働の上限規制を超えた労働が臨時的に可能になります。

  2. (2)特別条項にも上限がある

    特別条項付きの36協定を締結・届け出することによって、月45時間・年360時間という上限規制を超えて時間外労働が可能になりますが、この場合でも上回ることができない上限が設けられています。

    具体的には、以下のような内容です。

    • 時間外労働が年720時間以内
    • 時間外労働および休日労働の合計が月100時間未満
    • 時間外労働と休日労働の合計について「2か月平均」、「3か月平均」、「4か月平均」、「5か月平均」、「6か月平均」のすべてが1月あたり80時間以内
    • 時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6か月が限度


    このような上限規制に違反をした場合には、事業主に対して6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。労働者が合意していたとしても、上記の制限は撤廃することができませんので注意が必要です。

4、休日出勤した場合の割増手当

休日出勤をした場合には、割増手当の支払いも必要になります。

  1. (1)休日出勤と割増手当

    36協定の締結・届け出によって、休日出勤を命じることが可能になりますが、休日出勤をした場合には、法定の割増率によって割増をした割増手当の支払いが必要になります。

    労働基準法上の法定休日に出勤をした場合の割増率は、35%以上です。さらに、休日出勤の際に深夜労働をした場合には、それぞれの割増率も加算されますので、60%以上の割増率となります。

    このような割増率は、「法定休日」の出勤に対して適用されるものです。法定休日外の割増率については、時間外労働が25%以上、深夜労働が35%以上、時間外労働かつ深夜労働が50%以上となります。

  2. (2)振替休日と代休を取得した場合の考え方

    振替休日とは、あらかじめ休日とされていた日を労働日にする代わりに他の労働日を休日に振り替えることをいいます。振替休日を利用することによって、法定休日であった日の労働は、通常の労働日の労働と同じになりますので、賃金計算にあたって、休日出勤としての割増率の適用がなくなります。

    代休とは、休日出勤をした代償としてその後の労働日を休日にすることをいいます。振替休日と代休の違いは、あらかじめ休日を振り替えるかどうかという点です。代休の場合には、休日出勤を通常の労働日の労働と同様に扱うことはできませんので、休日出勤としての割増手当の支払いが必要になります。

  3. (3)割増手当や休日出勤分の給与の支払いがない場合は弁護士に相談を

    休日出勤をしたにもかかわらず、割増手当や休日出勤分の給与の支払いがないという場合には、弁護士に相談をすることをおすすめします。

    ① 割増手当の必要な休日出勤であるかどうかを判断してもらえる
    法定休日と法定外休日の考え方については、複雑な取り扱いになるため、意図せず誤った運用をしている会社もあります。

    そのような会社では、本来労働者に対して支払うべき割増手当や休日出勤分の給与の支払いがなされていないこともあります。まずは、弁護士に相談をして、実際の休日出勤が割増手当の支払いが必要な休日出勤であるかどうかを判断してもらうとよいでしょう。

    ② 会社との交渉を任せることができる
    割増手当の支払いが必要な休日出勤であったにもかかわらず、割増手当が支払われていないという場合には、会社に対して、未払いの賃金を請求していくことになります。

    しかし、会社に対して未払い賃金の請求をしたとしても労働者個人では、誠意をもった対応をしてもらえないことがあります。また、労働法上の複雑な法律論が問題になることも多く、必要な主張反論が十分にできないといったことも考えられます。

    そのような場合には、弁護士に依頼をして、弁護士に会社との交渉をしてもらうとよいでしょう。弁護士が窓口になって交渉をすることによって、会社に対してプレッシャーを与えることができ、交渉での解決が期待できます。

    ③ 労働審判や裁判となっても安心
    会社との話し合いで解決できない場合には、労働審判や裁判といった法的手段によって解決を図ることになります。このような法的手続きを行うにあたっては、専門的な知識や経験が不可欠となりますので、弁護士でなければ適切に進めることが難しいといえます。

    弁護士は、交渉から労働審判・裁判まで対応ができるため、精神的なストレスや時間的な負担も軽減できるでしょう

5、まとめ

会社が労働者に休日出勤を命じるためには、36協定の締結・届け出が必要になります。また、休日出勤をした場合には、会社に対して、法定の割増率以上の割合で増額をした割増手当を請求することができます。

休日出勤をしたにもかかわらず、会社から割増手当などの支払いがなされていない場合には、未払い賃金を請求することができる可能性がありますので、まずは、ベリーベスト法律事務所 錦糸町オフィスまでご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています