残業代請求すると会社から報復を受ける? 報復の違法性や対処法

2025年07月31日
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残業代請求すると会社から報復を受ける? 報復の違法性や対処法

江東区に本部を置く一般社団法人が、令和4年の1月から1年半の間に、亀戸労働基準監督署をはじめとする各労基署や東京労働局から、11回にもわたって行政指導を受けたことが報道されました。

労働条件や賃金未払いなど、労働者を取り巻く問題は、さまざまなものがあります。しかし、労働者が会社に申し入れを行うことは簡単なことではありません。たとえば、未払い残業代を会社に請求することは、労働者としての正当な権利です。しかし、残業代請求をしたことで会社から報復を受けるのではないかという不安から、泣き寝入りする方も少なくありません。

労働者からの残業代請求に対して、報復する行為は違法です。そのため、もし報復行為を受けた場合は、適切に対処することにより不利益を回避できる可能性があります。今回は、残業代請求により会社から受ける可能性のある報復行為とその対処法について、ベリーベスト法律事務所 錦糸町オフィスの弁護士が解説します。


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1、残業代請求で会社から受ける可能性のある報復とは?

まずは、残業代請求をしたことで会社から受ける可能性のある代表的な報復行為について説明します

  1. (1)転勤や関連会社への配置転換

    残業代請求に対する報復としてよくある行為のひとつが、報復人事です。
    複数の支店・支社がある会社であれば、残業代請求をきっかけに地方に転勤させる、関連会社へ出向させるなど、左遷するケースがあげられます。

  2. (2)違う部署への異動

    報復人事には、同じ会社内で違う部署に異動させるというケースもあります。

    部署異動には、さまざまな部署を経験させることで将来の管理職候補を育成するという意味もあります。しかし、報復行為として行われる異動は、閑職に追いやる、明らかに業務上の必要性がない異動をさせるといったように、嫌がらせ目的でなされるものです

  3. (3)役職の降格・減給

    労働者が規律違反行為をしたなどと理由をつけて、役職を降格または給料の減額をします。見せしめといった意味合いだけではなく、降格や減給をきっかけに労働者が自ら退職するように仕向けているとも考えられます

  4. (4)パワハラなどの嫌がらせ

    残業代請求をしたことをきっかけに、会社から嫌がらせを受けるというのは典型的な例ともいえます。

    • 上司、同僚から無視される
    • 仕事を与えられない、過剰な仕事を与えられる
    • サービス残業を強要される
    • 他社員の前で侮辱する
    など


    このような行為はパワハラに該当する可能性のある報復行為です。

  5. (5)損害賠償請求

    残業代請求をしたことの報復として、過去のささいなミスを理由として損害賠償請求を受けるケースがあります。
    しかし、会社から労働者に対する損害賠償請求が認められるケースは限定的であるため、このような報復目的での損害賠償請求は認められません。

2、残業代請求によって会社から受けた報復は違法?

残業代請求によって会社から受けた報復は、違法である可能性があります。報復の類型ごとの違法性について説明します。

  1. (1)配転命令の違法性

    会社には人事権があり、労働者の職務内容や勤務地などを決定する権限を有しているため、労働者の部署異動や関連会社への出向などを命じることができます。

    しかし、会社の人事権も無制限に行使できるものではなく、業務上の必要性がない場合や、不当な動機・目的をもってなされた場合、労働者に著しい不利益を負わせる場合は、違法となる可能性が高いでしょう

  2. (2)懲戒処分の違法性

    就業規則などに懲戒事由と懲戒の種類が規定されている場合には、会社は労働者に対して、懲戒処分として、減給、降格などを行うことができます。
    しかし、懲戒処分も無制限に行うことができるわけではなく、客観的合理的な理由を欠き、社会通念上の相当性を逸脱するような処分については、違法と判断される可能性があります。

    報復目的での懲戒処分は、客観的合理的な理由を欠くと考えられるため、基本的には違法な処分といえるでしょう

  3. (3)嫌がらせの違法性

    会社には労働者の健康と安全に配慮しなければいけない「安全配慮義務」があります。パワハラや嫌がらせなどの報復行為は、安全配慮義務に違反する行為であるため、違法と判断される可能性が高いでしょう

    この場合には、会社の安全配慮義務違反を理由として、損害賠償請求を行うこともできます。

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3、残業代請求で報復行為を受けたときの4つの対処法

残業代請求をしたことで、会社から報復行為を受けた場合の対処法を4つ紹介します。

  1. (1)労働基準監督署や総合労働相談コーナーに相談する

    総合労働相談コーナーとは、各都道府県の労働局や全国の労働基準監督署内に設置されている相談窓口です。解雇、雇い止め、配転、賃金の引き下げ、パワハラ、いじめ・嫌がらせなど、職場内のあらゆる労働問題を対象にしています。

    会社から報復行為を受けている場合には、総合労働相談コーナーに相談することで、解決に向けたアドアイスを受けられる可能性があります。
    相談の結果、労働基準法などの法令違反の疑いがある場合には、労働基準監督署の担当部署に取り次いでもらうことも可能です

    労働基準監督署や総合労働相談コーナーの相談料は無料ですが、あくまでアドバイスのみにとどまります。会社に対して指導が行われるケースもありますが、個人の案件を個別に対応してくれるわけではありません。

  2. (2)報復の証拠を残しておく

    会社からの報復を受けた場合は、処分の違法性を争うことに備え、報復を受けた証拠を残しておくことが大切です

    たとえば、会社とのメールのやり取りで報復に関する内容が記載されていた場合には、メールの履歴を保存する、暴言や過度な叱責(しっせき)を受けた場合には、その内容を録音しておくなどの対応が考えられます。

    違法性を争うためには、会社が報復目的で違法な行為をしたということを、労働者側が主張立証する必要があるため、有利に交渉を進めるためにもできる限り多くの証拠を残しておきましょう。

  3. (3)退職してから残業代を請求する

    在職中に残業代請求をすることで会社から報復のおそれがある場合には、退職してから残業代請求をするのもひとつの方法です。

    退職すれば会社に気をつかって行動する必要もなくなるため、報復をおそれて残業代請求を諦めてしまうことも回避できます。ただし、退職すると証拠を集めにくくなってしまうので、退職する前に準備をしておくと良いでしょう。

    また、残業代請求には時効という期間制限がある点にも注意が必要です。各月の給料日の翌日から3年が経過すると、時効により残業代請求権が消滅してしまいます。
    退職後に残業代請求をお考えの方は、残業代請求権の時効も意識しておくことが大切です。

  4. (4)弁護士に相談する

    会社から報復されることが不安な場合には、弁護士に相談するのも有効な解決方法です
    弁護士に相談することにより得られるメリットについては、次の章で説明します。

4、残業代請求や報復に関して弁護士に相談するメリット

残業代請求を考えているものの、会社からの報復が不安という方は、まずは弁護士にご相談ください。ここでは弁護士に依頼する3つのメリットについて解説します。

  1. (1)未払い残業代の計算や証拠収集のサポートを受けられる

    会社に対して残業代請求をするためには、未払い残業代の計算と証拠収集を行わなければなりません。

    未払い残業代の計算は非常に複雑なため、知識や経験がないと正確な金額を算定するのは困難です。また、残業代請求に必要な証拠は状況によって異なるため、十分な証拠を確保するには、弁護士のサポートがあると確実です。

    弁護士に相談すれば、未払い残業代の計算や証拠収集のサポートを受けられるので、適切に残業代請求を進められるだけでなく、負担も大幅に軽減できます

  2. (2)会社からの報復のリスクを減らすことができる

    弁護士に残業代請求を依頼すれば、労働者の代理人として弁護士が会社側との交渉を担当することになります。

    会社側は、残業代請求が労働者の正当な権利の行使ということも、それに対して報復をするのは違法であることも、十分に理解しているでしょう。くわえて、労働者の立場が弱いということも理解しています。

    その点、弁護士が代理人となることで、報復されることがないように会社に対して抑制をかけられるだけではなく、裁判など大事になるのを避けたいと考える会社が、スムーズに残業代請求に応じることを期待できます

  3. (3)報復行為の違法性を主張することができる

    報復により違法な配転、減給、降格、パワハラなどの行為を受けた場合にも、弁護士がサポートできます。弁護士は、違法な人事に対して無効を主張する、損害賠償請求を行うなど、ご依頼者の方の希望を伺いながら、対応策を講じることが可能です。

    交渉だけで解決できない場合は、労働審判や訴訟による解決を図ることになりますが、弁護士であればサポートが可能なので、会社側と話し合いができない状況だったとしても安心して任せることができるでしょう。

5、まとめ

残業代請求は労働者の正当な権利のため、それを理由にした報復や嫌がらせをすることは違法です。

会社から報復行為を受けた場合には、後日、報復行為の違法性を争うためにも、証拠を残しておくことが大切です。
また、報復されることが不安で残業代を請求できずにいる場合は、まずは弁護士へご相談ください。弁護士に相談をすれば、未払い残業代請求や報復行為への対応を任せることができます。

会社への残業代請求をお考えの方や、残業代を請求したら報復を受けたという方は、ベリーベスト法律事務所 錦糸町オフィスまでご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています