休職期間満了を理由に会社から解雇を告げられた。辞めるしかない?

2023年03月30日
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休職期間満了を理由に会社から解雇を告げられた。辞めるしかない?

2021年度に東京都内の総合労働相談コーナーに寄せられた民事上の個別労働紛争に関する相談は2万9447件でした。そのうち解雇に関する相談は3328件であり、11.3%を占めています。

休職期間が満了しても仕事に復帰できない場合は、会社による解雇のリスクが懸念されます。

しかし、休職期間満了後であっても解雇が認められるケースは限られており、不当解雇に当たる可能性も大いにあります。休職期間満了後に会社から一方的に解雇された場合は、今後の対応を検討するため、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。

今回は、休職に関する法律・労災(労働災害)のルールや、休職した労働者を解雇することの問題点などにつき、ベリーベスト法律事務所 錦糸町オフィスの弁護士が解説します。

出典:「個別労働紛争の解決制度等に関する令和3年度の施行状況について」(東京労働局)

1、休職期間が終了しても復帰できない場合は解雇?

休職中の従業員が、休職期間の終了後に復職できないとしても、会社が直ちに従業員を解雇できるとは限りません。解雇できる場合もあれば、解雇が違法となる場合もあります。

仮に合意退職を受け入れるとしても、退職条件が適正であるかどうかを慎重に検討するべきです。

  1. (1)休職期間満了後の解雇が認められるケース

    休職期間満了後の解雇が認められるのは、解雇要件を満たし、かつ解雇権濫用の法理に抵触しない場合に限られます。

    解雇には懲戒解雇・整理解雇・普通解雇の3種類があります。各解雇の概要・解雇要件は以下のとおりです。

    (a)懲戒解雇
    就業規則違反の非違行為を理由とする解雇です。就業規則上の懲戒事由に該当することが要件となります。

    (b)整理解雇
    経営不振などを理由とする解雇です。①解雇の必要性②解雇回避努力義務の履行③被解雇者選定の合理性④手続きの妥当性(=整理解雇の4要件)を総合的に考慮して、整理解雇の可否が判断されます。

    (c)普通解雇
    懲戒解雇・整理解雇以外の解雇です。労働契約・就業規則上の解雇事由に該当することが要件となります。


    休職期間満了後の解雇は、普通解雇に該当するのが一般的です。

    休職期間満了後に復職できない場合、たとえば「○○日以上の連続欠勤」「就労能力を有しなくなったこと」などが労働契約・就業規則上の解雇事由に挙げられていれば、普通解雇の要件を一応満たします。

    ただし、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は違法・無効となります(労働契約法第16条)。これを「解雇権濫用の法理」といいます。

    したがって、休職期間満了後に復職できないことが解雇事由に当たるとしても、次のハードルとして解雇権濫用の法理に抵触しないことが必要です。

    たとえば、「休職期間満了後の欠勤が相当長期に及んでいる」「就労能力の大部分を失って配置転換も困難である」など事情があって初めて、休職期間満了後の解雇が適法になり得ると考えられます。

  2. (2)休職期間満了後の解雇が違法となるケース

    解雇要件を満たさない場合(普通解雇であれば、労働契約・就業規則上の解雇事由に当たらない場合)には、休職期間満了後の解雇は無効です。

    また、復職が多少延びているものの、近いうちに復職できる見込みがある従業員を解雇することは、解雇権濫用の法理によって違法・無効になると考えられます。

    さらに業務上負傷し、または疾病にかかって療養のために休業している従業員については、休業期間およびその後30日間、原則として解雇が禁止されます(労働基準法第19条第1項)。

    この休業期間は、会社の制度に基づく休業(休職)期間ではなく、実際の療養に必要な休業期間です。したがって、業務災害によって休業している従業員については、休職期間満了後に復職できないとしても、療養が終了するまでは原則として解雇できません

  3. (3)休職後に合意退職するケースもある|ただし退職条件は要確認

    休職から復帰できないことに申し訳なさを感じて、従業員が合意退職に同意するケースもあるようです。

    しかし、仕事ができない状態で退職すると、その後の生活費の目途を立てるのが難しくなってしまいます。そのため、法律および契約に照らして退職する必要がないのであれば、できる限り会社に留まることをおすすめします。

    仮に合意退職を受け入れるとしても、退職金の支払いなどについては交渉の余地があります。会社から提示される退職条件が妥当かどうか、弁護士のアドバイスを求めましょう。

2、そもそも休職とは|法律・労災に関するルール

ここで今一度、休職に関する法律・労災のルールを確認しておきましょう。
休職の取り扱いは、労災に起因するものであるか否かによって異なります。

  1. (1)労災に当たらない休職の取り扱い

    休職の原因となったケガ・病気が労災に当たらない場合、原則として会社には、従業員の休職を認める義務はありません。したがって、休職が解雇事由に該当する場合には、解雇が適法と認められる可能性が高くなります。

    ただし、会社が独自に傷病休職制度を設けている場合、その内容は労働契約の一部となりますので、制度の要件を満たす限りは休職を認めなければなりません

  2. (2)労災に当たる休職の取り扱い

    休職の原因となったケガ・病気が労災に当たる場合、それが「業務災害」と「通勤災害」いずれであるかを区別する必要があります。

    「業務災害」は業務上の原因により発生したケガや病気など、「通勤災害」は通勤中に発生したケガや病気などです。

    業務災害・通勤災害のいずれも、労働基準監督署に対して請求できる労災保険給付の対象となります。

    その一方で、業務災害には休業期間とその後30日間の解雇制限が適用されますが(労働基準法第19条第1項)、通勤災害には解雇制限が適用されません。

    したがって、通勤災害によって休職していた従業員が復帰できない場合における解雇の可否は、業務外の原因による休職と同様の基準で判断されます。

3、休職を繰り返しても大丈夫なのか?

ケガや病気による休職からいったん復職しても、その後に体調が優れず、再び休職してしまうこともあるかと思います。

休職を繰り返したとしても、休職制度で認められている範囲内であれば問題ありません。要件に従って休職制度を利用することは、従業員の契約上の権利だからです。

また、業務上の負傷または疾病によって休職していた場合であれば、必要があれば再度の休職も認められます。会社は、療養に必要な休職期間とその後30日間、従業員を解雇することができません(労働基準法第19条第1項)。

これに対して、通勤災害や業務外の原因によるケガ・病気が原因で休職していた場合には、復職できなければ退職せざるを得ないこともあります。

退職を避けるためには、休職期間の満了に合わせた復職を目指すべきですが、無理をしてさらに体調が悪化しては問題です。今の会社だけにこだわるのではなく、雇用保険を受給しながらの転職活動も視野に入れるべきでしょう。

4、休職について、会社の対応に納得できない場合は弁護士にご相談を

休職期間明けの従業員の取り扱いは、会社によってまちまちです。仕事復帰を積極的にサポートしてくれる会社もある一方で、閑職に追いやったり、正当な理由なく解雇したりする会社も存在します。

休職の理由によっては、従業員は労働法による保護を受けられる可能性があります。休職に関して、会社から不当な取り扱いを受けた場合には、弁護士にご相談の上で対応を検討しましょう。

弁護士は、休職の理由や会社の行動を踏まえて、従業員として会社に主張できる権利の実現を目指します。不当な配置転換・懲戒処分・解雇などには徹底的に対抗し、依頼者の仕事と生活を守るために尽力いたします。

休職からなかなか復帰できず、会社との間でトラブルに発展してしまった方は、早めに弁護士までご相談ください。

5、まとめ

休職期間満了後も復帰できない従業員を解雇することは、常に認められるわけではありません。状況次第では、解雇が違法・無効となることもあります。

具体的には、休職期間満了後の欠勤が解雇事由に該当しない場合や、解雇権濫用の法理に抵触する場合には、解雇が違法・無効となります。また、業務上の原因による負傷・疾病によって休職していた場合には、療養に必要な休業期間とその後30日間は解雇が認められません。

このように、休職の理由によっては、従業員は労働法の保護を受けられます。しかし、会社が労働法の規制を無視して、休職から復帰できない従業員を安易に解雇するなどの事例も散見されるところです。

もし休職に関して、会社から不当な取り扱いを受けた場合には、弁護士への相談をおすすめします。ベリーベスト法律事務所 錦糸町オフィスの弁護士は具体的な状況に応じて、従業員としての権利を会社に対して毅然と主張し、依頼者の仕事と生活を守るために尽力します。

休職からなかなか復帰できない方、休職後に会社から解雇されてしまった方などは、お一人で悩み続けることなく、ベリーベスト法律事務所 錦糸町オフィスにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています