残業代は何分単位で請求できる? 1時間・30分・15分の切り捨ては違法か

2024年05月27日
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残業代は何分単位で請求できる? 1時間・30分・15分の切り捨ては違法か

労働基準法を遵守せずに残業代を支払わない会社は存在します。「1時間未満の残業時間を切り捨てられているけど、自分が勤めている会社は残業代を正しく支払っていないのではないか……」などと、気になる方も多いのではないのでしょうか。

本コラムでお伝えすることは、大きく以下の3つです。
・残業代は何分単位で請求できるのか
・1時間未満の残業代の切り捨ては違法か
・会社に対して1分単位で残業代を請求する方法

ご自身が務めている会社が残業代を正しく支払っているのか気になっている方に向けて、ベリーベスト法律事務所 錦糸町オフィスの弁護士が解説します。


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1、残業代は何分単位で請求できる?

  1. (1)残業代は1分から請求できる

    残業をした場合には、残業時間に応じて残業代を請求することができます(労働基準法37条1項)。

    残業時間は、たとえ1分であっても残業時間であることに変わりありません。したがって、残業時間は原則として1分ごとに管理して計算しなければならないというのが労働基準法に基づいた残業代計算のルールです。

    残業時間に応じて残業代を請求できることはある意味では当たり前のことかもしれません。しかし、残念ながら、必ずしもすべての会社が1分単位で残業時間を管理して残業代を支払っているわけではないのが実情です。

  2. (2)15分単位の切り捨ては適法か?

    1分でも残業をすればその分だけ残業代を支払わなければならないため、会社は残業時間を1分単位で管理して計算しなければなりませんしたがって、毎日の残業時間を1時間単位や30分単位で計算してその端数を切り捨てて、残業代を支払わないことは、労働基準法違反となります

    では、“15分単位”であればどうでしょうか?

    1分単位で計算しなければならないというのが法律で定められたルールである以上、たとえ15分や10分、5分単位であってもその端数の切り捨てが労働基準法違反であることに変わりありません。毎日の残業時間は、必ず1分単位で管理して計算しなければならず、これを守らなければ違法となってしまうのです。

2、残業時間の切り捨てが労基法違反とならないケースもある

原則として、残業時間は1分単位で管理して残業代を計算しなければなりません。ただし、例外的に、残業代計算の際に30分未満の端数を切り捨てても違法とはならない場合が存在します。それは、1月分の残業時間を計算した結果生じた“30分未満”の端数を切り捨てるケースです。

1月分の残業時間を合計した結果として1時間に満たない端数が30分未満の端数を切り捨てて30分以上の端数を切り上げるという方法であれば、必ず労働者の不利益になるわけではありませんし、残業代計算の事務を簡略化できるメリットもあるため、労働者の同意があれば、労基法24条及び37条違反としては取り扱わない(通達昭和63年3月14日基発第150号)とされています。

もっとも、労基法違反とならないから支払わなくてよいかどうかは別問題です少額すぎて判例はありませんが、切り捨てた分の残業代を請求できる可能性は残ります

3、会社に対して1分単位での残業代請求をする方法とは?

毎日の残業代について1分単位での残業代計算がなされていない場合に、未払いとなっている残業代を請求するためにはいったいどのようにすればよいのでしょうか。

  1. (1)まずは証拠を集める

    まずは、残業代請求の根拠となる証拠をそろえなければなりません。

    • 所定労働時間など労働条件が分かる証拠
    • 毎日の労働時間が分かる証拠


    のふたつが必要となります。

    所定労働時間とは、就業規則や雇用契約書などからわかる残業代が発生しない労働時間です。そのため、就業規則、労働契約書などの入手が必要となります。また、毎日の労働時間が分かる証拠は、出退勤時間を記録したタイムカードや給与明細、社用パソコンのログ時間などといったものがあります。

    この他にも、退勤直後に欠かさず家族に送っているメールなども退勤時間を証明するための証拠となるケースもありますし、証拠がないと思われるケースでも概算による労働時間が認められることもあるため、「証拠がない、手に入りにくい」というケースでもあきらめずに、まずは労働問題の解決実績がある弁護士に相談してみましょう

  2. (2)残業代請求の手順

    【内容証明郵便】
    残業代請求を行う場合、まずは会社との交渉からはじめるのが一般的です。この交渉に先立って、内容証明郵便で会社に残業代請求の通知を送ります。内容証明郵便とは、その名の通り、送付した内容・相手・日付などを日本郵便が証明してくれる郵便物のことです。

    残業代請求の通知には、未払い残業代の額をはっきりと記載し、支払いの期限を設定して期限までに支払うように記載します。また、会社から内容証明郵便が届いていないと主張された場合に備えて、内容証明郵便を送付する際には忘れずに配達証明もつけるとよいでしょう。

    【労働基準監督署】
    会社と話し合いをしても残業代の支払いに応じてもらうことができない場合には、労働基準監督署に相談をします。労働基準監督署に残業代未払いの事実について相談し、会社に対して未払い残業代を支払うように指導をしてもらいます。
    また、労働基準監督署に和解のあっせんをしてもらい、その手続きの中で会社と話し合いをすることもできます。

    ただし、労基署が会社に対して行えるのは、会社に対する是正勧告や指導です。残業代の請求は、労働条件の解釈や労働時間について多くの争点が発生するため、それぞれの争点については法律論を争って交渉する必要があります。しっかりと残業代を支払ってもらうためには、労働問題について実績のある弁護士への相談も検討するとよいでしょう。

    【労働審判】
    会社が労働基準監督署の指導にも応じず、また話し合いの場を設けても和解もできない場合には、労働審判の申し立てを検討します。

    労働審判は、原則として3回以内の期日で、労働者と会社との間の紛争を解決する制度です。裁判所が当事者双方のいい分を聴いた結果、裁判所の仲介によって和解が成立することもありますし、和解が成立しない場合にも、残業代が発生していることを証明できれば残業代支払いの審判が下されます。ただし、当事者のどちらかが審判の結果に対して不服があり、異議を申し立てれば訴訟に移行します。

    なお、労働審判を利用しないで、いきなり訴訟を提起することも可能です。

    【訴訟】
    訴訟は、労働審判のように短期間で解決することは難しく、長期化してしまうデメリットがあります。しかし、判決が確定すれば、未払い残業代を会社に支払ってもらう権利が正式に確定し、紛争を終局的に解決できるメリットがあります。
    また、労働審判は、短期間に解決することを目指す手続きであるため、争点について十分な検討が行われないことがありますが、訴訟では、主張立証を尽くした上で判決に至りますので、争点について十分な検討がなされます。

4、過去にさかのぼって残業代請求ができるか?

  1. (1)残業代請求の時効

    残業代請求には時効があります(労働基準法115条)。時効とは、残業代が発生した時から一定期間を経過すると、その残業代を請求することはできなくなるということです。

    残業代請求の時効は2020年4月1日の民法改正により、2年から3年に延長されました。したがって、残業代が発生した時(残業代の支払日=給料日)から3年が経過するまでの間は請求することができます。

    過去にさかのぼって残業代の請求をしたいと考えている場合は、早めに行動を起こす必要があるといえるでしょう。

  2. (2)弁護士に依頼するメリット

    1時間未満の残業代を請求するにあたっては、具体的にどれだけの未払い残業代が発生しているのかを正確に計算しなければなりません。また、計算するための争点について、しっかりと法的な主張を行わなければ、本来得られた残業代を失ってしまうことにもなりかねません。さらに、争点にかつためにはどのような証拠が有効かという判断も必要になります。そして、算出した残業代を認めて支払うように会社と交渉をし、会社の対応によっては訴訟などの法的手続きも必要になってきます。

    正当な残業代を計算して、争点ごとに主張を整理し、会社と交渉して支払ってもらうことは極めて難しいものです。弁護士は、正しい法律知識に基づいて、残業代の計算、会社との交渉や訴訟などといった手続きを労働者に代わって進めることが可能です。また、弁護士が代理で内容証明郵便を送ったり、会社と交渉したりすることで、会社側の対応がより迅速になることが期待できるでしょう

5、まとめ

1時間未満の残業代が切り捨てられて未払いとなっている場合でも、残業代請求をあきらめる必要はありません。労働問題の実績がある弁護士に依頼すれば、未払い残業代獲得のための証拠収集のサポート、会社との交渉、状況に応じた訴訟まで、煩雑な法的手続きをすべて一任することができます。

1時間未満の残業代が切り捨てられて未払いとなっていることに悩んでいるのであれば、まずは、ベリーベスト法律事務所 錦糸町オフィスにお気軽にご相談ください。残業代請求や不当解雇など、労働問題の解決実績が経験豊富な弁護士が、全力を尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています