盗撮で逮捕された! 警察にスマホを解析されて余罪が出たらどうなる?
- 性・風俗事件
- 警察
- スマホ解析
- 余罪
盗撮したことが発覚した、もしくは逮捕されたとき、「余罪も発覚してしまうのではないか」と恐れる方もいるでしょう。
東京都では、迷惑防止条例により、スマートフォン(以下スマホ)等による盗撮行為を禁止しています。平成30年には盗撮行為の規制場所が拡大され、罰則も強化されています。
もし、スマホ使って盗撮を繰り返していた場合は、警察に押収されたスマホから過去の余罪もばれてしまい、厳しい処分を受けるのではないかと不安になるはずです。
本コラムでは、盗撮事件で逮捕されてしまった場合、警察にスマホを解析されて余罪が発覚してしまうおそれはあるのか、余罪は刑罰に影響するのか、余罪がある場合はどのように対応するべきなのかなどを、ベリーベスト法律事務所 錦糸町オフィスの弁護士が解説していきます。
1、スマホで盗撮した場合に問われる罪と罰則
スマホを使った盗撮行為は犯罪です。ただし、わが国の法律には「盗撮罪」という名称の犯罪は存在しません。
盗撮行為は、主にここで挙げる3つのうちいずれかの罪を問われることになります。
-
(1)迷惑防止条例違反
迷惑防止条例とは、各都道府県が定めている条例のひとつです。
正式な名称は各都道府県によって異なりますが、おおむね「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」や「迷惑行為等防止条例」といった名称が使われています。
全国すべての都道府県に存在する条例で、盗撮のほか、痴漢・のぞき・客引き・つきまといなどの行為が処罰の対象です。
東京都においても「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」が制定されており、盗撮行為が禁止されています。
東京都の迷惑防止条例第5条第1項2号で禁止されている「盗撮行為」は次のとおりです。次のいずれかにかかげる場所または乗物における人の通常衣服で隠されている下着または身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、または撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、もしくは設置する行為
特定の場所とは、以下の通りです。
- 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部または一部を着けない状態でいるような場所
- 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定または多数の者が利用し、または出入りする場所または乗物
なお罰則は、以下の通りになります。
● 撮影したとき
1年以下の懲役または100万以下の罰金(常習の場合は2年以下の懲役100万以下の罰金)
● 撮影機器を差し向けたとき、設置したとき
6月以下の懲役または50万円以下の罰金(常習の場合は1年以下の懲役または100万以下の罰金) -
(2)軽犯罪法違反
軽犯罪法は軽微な秩序違反行為を規制するために設けられた法律です。
第1条において33の行為を処罰の対象として列挙しており、第23号に「正当な理由がなくて人の住居・浴場・更衣場・便所そのほか人が通常衣服をつけないでいるような場所ののぞき見」も挙げています。
実際に盗撮していなくても「のぞき見」の段階で処罰の対象です。
罰則は1か月未満の身柄拘束を受ける「拘留」、もしくは1万円未満の金銭徴収を受ける「科料」が定められています。 -
(3)刑法の住居侵入罪・建造物侵入罪
盗撮目的で他人の住居や敷地などに無断で立ち入れば、刑法第130条の「住居侵入罪」に問われます。
また、出入りが自由な商業施設などでも、盗撮目的で立ち入れば同条の「建造物侵入罪」です。たとえ盗撮・のぞき見をしていなくても、不法な目的をもって侵入した時点で犯罪の成立は免れられません。
住居侵入罪・建造物侵入罪の刑罰は3年以下の懲役または10万円以下の罰金です。
2、スマホ解析で余罪が発覚するおそれはあるか?
警察に盗撮の容疑をかけられてしまうと、スマホの解析によって余罪が発覚する危険があります。
-
(1)盗撮事件ではスマホが押収される可能性が高い
犯罪の容疑をかけられると、証拠となる物品が「押収」されることがあります。
押収とは、犯罪の証拠品や没収すべき物を法律に基づいて官憲が取得する行為です。
警察の捜査においては強制力のある「差し押え」や所有者の任意提出にもとづく「領置」があります。
スマホは犯行前後の行動や生活に関する情報が多数記録されています。
とくに盗撮事件では、盗撮画像が記録されている物的な証拠となるため、現在使用しているものだけでなく、自宅に保管しているすべてのスマホが押収される可能性はきわめて高いでしょう。 -
(2)スマホの解析によって余罪が発覚する危険も高い
警察は、押収したスマホを徹底的に解析します。保存している画像も一枚ずつ確認されることになり、ほかの盗撮行為も発覚する危険が高いでしょう。
本件にあたらない別件の盗撮行為は「余罪」として扱われます。余罪とは、いまだ捜査の対象になっていない、または被害が発覚しているものの容疑者が特定されていない、あるいは捜査の対象になっているが起訴されていない事件を指す用語です。 -
(3)盗撮画像を削除しても余罪は露見する
容疑をかけられてしまった時点で余罪分の盗撮画像を削除すれば、余罪が発覚することはないように思えます。
ただし、警察は押収したスマホの解析を進めるため、削除済みの画像データも復元できる場合があり、程度によっては水没したスマホからのデータ復元も可能なので「画像を削除すれば証拠がなくなる」「スマホを壊してしまえば大丈夫」などと考えるべきではありません。
3、余罪は量刑に影響するか?
スマホに盗撮の余罪を示す画像が保存されている場合は「余罪分も罪が重たくなるのか」という点が気になるはずです。
余罪があることで刑罰が重くなることはあるのでしょうか?
-
(1)併合罪となって法定刑が重くなることがある
余罪が発覚し、本件と余罪の両方が起訴されると、これらは「併合罪」として処理されます。
併合罪とは、同一の人物が2つ以上の罪を犯し、かつ確定裁判を経ていないことを指す用語です。
懲役・禁錮は刑法第47条の規定によって「もっとも重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたもの」が刑罰の上限となります。罰金の場合は刑法第48条2項の規定により「それぞれの罪について定めた罰金の多額の合計以下」です。
たとえば、盗撮目的で他人の住宅に無断で立ち入って逮捕され、さらにスマホ解析で別件の盗撮が発覚して立件されたケースを仮定しましょう。
住居侵入罪の法定刑は3年以下の懲役または10万円以下の罰金、東京都の迷惑防止条例の罰則は6か月以下の懲役または50万円以下の罰金です。
すると、懲役が科せられる場合は、もっとも重い住居侵入罪の法定刑の上限に2分の1を加える、つまり法定刑の上限が1.5倍になるので、法定刑は4年6か月まで引き上げられます。
一方、罰金が科せられる場合は、両罪の罰金の上限を合計するので上限は80万円です。 -
(2)立件されなくても裁判官の心証を悪くして量刑が重くなる危険がある
立件されていない余罪の分を上乗せして刑罰を決めることは許されませんが、犯行の手口などから常習性が認められると評価されてしまうこともありえます。
常習性が高ければ高いほど、裁判官の心証が悪くなり、更生が期待できず再犯に走る危険があるまたは、犯罪を思いとどまることができないほど規範意識が薄れているなどと評価されてしまい、刑罰が重くなることもあり得ます。
4、余罪がある場合はどうすべきか?
盗撮が発覚し、スマホ解析による余罪の発覚や刑罰に不安を感じているなら、弁護士への相談をおすすめします。
-
(1)弁護士に相談して「自白」すべきかを検討する
余罪について警察から取り調べを受けた際に、素直に罪を認めて犯行の状況を自白するかどうかは悩ましいところです。
すでにある程度の証拠をつかまれているなら、素直に自白して印象を良くしたほうが良いこともあります。とはいえ、スマホで撮影した盗撮画像は、画像が不鮮明であったり、被写体にフォーカスしていて周囲が写り込んでいなかったりすることも多いので、いつ、どこで、誰を対象にしたものかも判然としないでしょう。
自白に頼らないと特定できないような状況なら、黙秘権を行使する、余罪について「おぼえていない」と供述するなどの対策も有効です。
弁護士に相談し、自白すべきかどうか、黙秘権の行使を含めて取り調べでどのような供述に徹するべきなのか、アドバイスを受けましょう。 -
(2)余罪分の被害者と示談交渉を進めて立件を避ける
いつ、どこで、誰が対象となった盗撮なのかが明確なら、余罪として立件されてしまう危険が高まります。
弁護士に依頼して、余罪分の被害者との示談交渉を進めてもらいましょう。余罪分の被害者との示談が成立していれば、新たに被害届・告訴状が提出される危険を回避できるので、余罪分の立件を避けられる可能性が高まります。
盗撮に関する犯罪は、いずれも「親告罪」ではありません。検察官の判断によっては、たとえ示談が成立していても起訴に踏み切ることが可能です。
しかし、すでに示談が成立しており、被害者に対する一定の賠償を尽くして許しを得ているという事実は高く評価されるため、立件されるリスクは大幅に軽減されるでしょう。
盗撮被害者との示談交渉を進めるには弁護士にサポートが不可欠です。
多くの盗撮被害者は、犯人に身元を特定される情報を教えたくないため弁護士を介さなければ交渉すらできないこともありますし、加害者に対して強い嫌悪や怒りの感情を抱いているため、示談交渉をかたくなに拒絶されてしまうおそれがあります。
弁護士に対応を一任することで被害者の警戒心がやわらぐので、示談成立を実現できる可能性も高まるはずです。
5、まとめ
盗撮行為は、迷惑防止条例などによって厳しく処罰されます。また、以前にスマホを使って盗撮行為を犯していれば、警察にスマホを押収・解析されて余罪分の証拠を握られてしまうかもしれません。
余罪もあわせて立件されると、法定刑が重くなったり、裁判官の心証が悪くなったりして、厳しい量刑を言い渡されてしまう危険があります。
余罪について容疑を自白するのか、黙秘権を行使するのかといった検討や、余罪分の被害者との示談交渉は、弁護士に一任したほうが安全です。
盗撮容疑をかけられてスマホ解析による余罪の発覚に不安を感じているなら、盗撮事件の解決実績を豊富にもつベリーベスト法律事務所 錦糸町オフィスにご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています