自己破産しても賃貸住宅に住める? 家賃保証会社に要注意!

2022年06月23日
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自己破産しても賃貸住宅に住める? 家賃保証会社に要注意!

自己破産とは借金の返済が不可能だと裁判所に認められた場合に、免責が許可されることで、多額の借金の返済義務がすべてなくなる制度です。

その反面で、信用情報機関に事故情報が登録され、
・ 新規の借入
・ クレジットカードの利用
・ 住宅ローンが組めなくなる
などのデメリットもあります。

そのため、自己破産すると「賃貸住宅の契約ができなくなるのではないか」「いま住んでいる賃貸住宅からも追い出されるのではないか」といった不安を持つ人も少なくありません。

結論をいいますと、自己破産をしても賃貸住宅に住むことはできます。ただし、注意すべきポイントがいくつかあります。そこで今回は、自己破産が住宅の賃貸借契約にどのような影響を及ぼすのかについて、分かりやすく解説していきます。

1、自己破産と賃貸借契約の関係

法律上、自己破産と住宅等の賃貸借契約との間には何の関係もありません。以下で、具体的に解説していきます。

  1. (1)自己破産しても賃貸借契約はできる

    自己破産した人が賃貸借契約を結ぶことを制限する法律の規定はありません。したがって、自己破産しても原則として新たな賃貸借契約を結ぶことに支障はありません。

    一方
    • 借入
    • クレジットカード
    • 住宅ローン

    などの契約をする際には、申込者の支払い能力を審査するために信用情報が照会されます。

    自己破産をしていると事故情報が登録されているため、「支払い能力なし」とみなされ、審査を通過することができません。

    これに対して、賃貸借契約は金融取引ではないので、住宅の貸主が信用情報を照会することはありません。そもそも、自己破産したことを貸主に申告する必要もありません

    勤務先、年収などの情報は尋ねられますが、家賃を支払う能力があると判断されれば賃貸借契約を結ぶことが可能です。

  2. (2)自己破産は賃貸借契約の解除事由ではない

    住宅の借主が自己破産をしても、貸主が一方的に賃貸借契約を解除することはできません。したがって、自己破産をしても原則として、いま住んでいる賃貸住宅から追い出されることもありません

    以前は借主が自己破産をすると貸主が賃貸借契約を解除できるという民法の規定があったため、自己破産をした借主が退去させられるケースもありました。

    しかし、2004年の破産法改正に伴い民法のこの規定も廃止されたため、2005年以降の民法では借主の自己破産は賃貸借契約の解除事由(当事者の一方が契約を解除できる事情)とはされていません。

2、自己破産後に賃貸住宅から追い出される3つのケース

例外的に、借主が自己破産をすると、いま住んでいる賃貸住宅から追い出されるケースが3つあります。
以下で確認していきましょう。

  1. (1)家賃を滞納している

    一般的に家賃を3か月分以上滞納すると、貸主・借主間の信頼関係が破壊されるため、貸主は催告(特定の行為を要求すること)することなく賃貸借契約を解除することが可能となります。

    自己破産の前に、家賃滞納をしている場合、他の借金を返済せず滞納家賃だけを支払うことは偏頗弁済とされ、原則として許されないことに注意が必要です。なぜなら、この場合は住宅の貸主も債権者となり、自己破産手続きにおいては他の債権者と平等に扱わなければならないからです。このことを「債権者平等の原則」といいます。

    これを守らずに偏頗弁済を行うと免責不許可事由に該当する場合があるのでご注意ください。

    もし、滞納家賃のみを一括で支払った後に自己破産をすると、破産管財人によって弁済行為が否認されその金額が受け戻され、全債権者への配当に充てられます。そうすると結局、家賃を滞納していることになるので、賃貸借契約は解除されてしまいます。

    ただし、実際には滞納期間と金額が軽微である場合は、手続きの運用上、優先的な支払いが許されることもあります

    • どの程度の滞納期間
    • 金額

    までが許されるのかについては、裁判所ごとに運用が異なりますので、法律の専門家である弁護士に相談して確認した方がよいでしょう。

  2. (2)家賃が自分の経済状況に比して高い

    自分の経済状況に比して家賃が高い賃貸住宅に住んでいる場合には、滞納がなくても、自己破産手続きにおいて賃貸借契約を解除しなければならないことがあります

    なぜなら、自己破産は返済できない借金を抱えてしまった人の経済生活を再建することを目的とする制度だからです。家賃が不相当に高い賃貸住宅に住んでいると、たとえすべての借金の返済義務を免除されたとしても、その破産者の経済生活を再建できない可能性があります。

    家賃が手取り月収の概ね3分の1を超える賃貸住宅に住んでいる場合は、自己破産をすると破産管財人から賃貸借契約の解除を指示される可能性があります。従わなければ、原則として免責許可が得られません。

  3. (3)家賃保証会社に更新を拒絶される

    家賃保証会社を利用して賃貸借契約を結んでいる場合には、自己破産後すぐではありませんが、契約更新時に追い出される可能性があります

    家賃の保証契約は金融取引に当たるので、家賃保証会社は新規契約や更新の際に借主の信用情報を照会します。そのため、借主が自己破産をして事故情報が登録されると、家賃保証会社は保証契約の更新を拒否することがあります。

    家賃保証契約がなくなってしまうと、通常は貸主も賃貸借契約の更新を拒否することになるので、これが借地借家法における更新拒絶の「正当事由」に該当する場合には、追い出されてしまうことになります。

3、自己破産後に新たな賃貸借契約をスムーズに結ぶ方法

万が一、自己破産をしたことで賃貸住宅から追い出された場合は、新たな賃貸住宅を見つけて契約しなければなりません。新たな賃貸借契約をスムーズに結ぶ方法は、以下のとおりです。

  1. (1)信販系の家賃保証会社を避ける

    近年は家賃保証会社の利用を賃貸借の条件とする家主が増えつつありますが、家賃保証会社には大きく分けて、「信販系」「信用系」という2種類の業者があります。

    信販系の家賃保証とは、信販会社やクレジットカード会社が提供しているサービスのことです。信販系の家賃保証会社は信用情報機関に加盟しているため、自己破産をしていると利用できません。

    それに対して、信用系(「民間系」と呼ばれることもあります)の家賃保証会社は、信用情報機関に加盟せず、独自の審査基準で家賃保証サービスを提供している業者のことです。審査に際して信用情報を照会することがありませんので、安定収入があれば利用できる可能性が高いです。

    どの家賃保証会社を利用するかは家主が指定するので、借主が自由に選べるわけではありません。賃貸住宅を探す際は、「信用系」(民間系)の家賃保証会社の利用が条件とされている物件を選ぶとよいでしょう。

  2. (2)連帯保証人をつけて契約できる物件を探す

    現在でも連帯保証人をつけて契約できる賃貸物件が数多くあるので、身内の方などに連帯保証人を依頼できる場合は、そういった物件を探すとよいでしょう。

    家主には自己破産したことを話さない方がよい場合が多いですが、不動産仲介業者には話しても差し支えありません正直に話して相談すれば、契約可能な物件を紹介してもらえる場合もあります

  3. (3)家族名義で契約する

    破産者本人の名義で賃貸借契約を結ぶことが難しい場合は、家族名義で契約することも検討してみましょう。

    信用情報機関への事故情報の登録は個人単位なので、本人が自己破産をしても家族の信用情報に傷はつきません。したがって、家族名義で申し込めば、家賃保証会社の審査を通過できる可能性があります

    配偶者や親、成人した子ども等と同居する場合は、家族名義で契約を申し込んでみるとよいでしょう。

4、自己破産をお考えなら弁護士に相談

自己破産と住宅の賃貸借契約は法律上無関係であるとはいえ、実際には自己破産をすることで賃貸借契約に影響を及ぼすことがしばしばあります。

住居を確保できなければ生活に窮してしまいますので、自己破産をお考えのときはまず弁護士に相談することをおすすめします。専門的なアドバイスを受けることで、事前に住居を確保する措置をとることが可能となります。

自己破産の複雑な手続きは依頼した弁護士にすべて任せることができますので、安心して新たな生活を始めることができるでしょう。

5、まとめ

自己破産をしても賃貸住宅に住むことは十分に可能ですが、初めて自己破産をする方は分からないことや不安なことが数多くあることでしょう。そんなときは、弁護士にご相談ください。

自己破産手続きの内容から手続き中・手続き後の注意点まで、具体的なアドバイスが得られます。自己破産するかどうかで迷っている方も、弁護士からアドバイスを受けることで最適な解決方法が見つかるはずです。

ベリーベスト法律事務所では、債務整理に関するご相談は何度でも無料でご利用いただけますので、ご気軽にお問い合わせください。

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