職務質問から逃げたらどうなる? 職務質問を受けた場合の対処法

2022年06月30日
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職務質問から逃げたらどうなる? 職務質問を受けた場合の対処法

繁華街にはさまざまなトラブルがつきものです。そのため、各交番の警察官が繁華街のパトロールを強化していますが、たとえば錦糸町駅南口交番は「墨田区客引き行為等の防止に関する条例」にもとづく各種対策をおこなっているため、周辺で「職務質問」を受けた経験がある方もいるかもしれません。

特にやましいことがなくても職務質問は緊張するものです。もし突然職務質問されたら、拒否できるのでしょうか。また、思わずその場から逃げてしまった場合、問題はないのでしょうか。

本コラムでは警察官の「職務質問」について、法的な角度から「応じる義務があるのか」「逃げたらどうなるのか」といった疑問に答えていきます。職務質問を受けたときの対応についても紹介していきましょう。

1、職務質問に応じる義務はある?

繁華街などを歩いていたり、自転車で走っていたりすると、とつぜん警察官に「ちょっと止まってください」と声をかけられて、あれこれと質問を受けることがあります。

これが「職務質問」の典型例ですが、そもそも警察だからといって善良な市民に声をかけて足を止めさせたり、質問に答えさせたりする権限があるのかと疑問に感じるかもしれません。

職務質問を受けたからといって、応じる義務はあるのでしょうか?

  1. (1)職務質問は法律にもとづいている

    職務質問は「警察官職務執行法」の第2条にもとづく行政警察活動です。

    同条1項によると、警察官には「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して、何らかの犯罪を犯し、もしくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者、またはすでに行われた犯罪について、もしくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者」に対して、その者を停止させて質問する権利が認められています。

    何らかの犯罪についての嫌疑がある、あるいは犯罪に関する事情を知っている人に「声をかけて足を止めさせる」「質問をする」という行為は、犯罪の予防や鎮圧の目的から法律で認められた正当な警察活動です。

  2. (2)原則として応じる義務はないが拒否は難しい

    職務質問は正当な警察活動ですが、あくまで任意に行われるものであり、職務質問を受けた者は、応じたくない場合には協力を拒否することが出来ます。

    ただし、実際のシチュエーションでは、職務質問を拒否するのは困難です。職務質問が任意の協力にすぎないことを盾に「応じる義務はない」と反論しても、かたくなに拒めばかえって強い疑いを持たれてしまうおそれがあります

    警察官はたとえば次のような理由で職務質問を行い、あの手この手を使って対象者を引き留めようとしてきます。

    • 近辺で起きた事件の容疑者と人相が似ていた
    • 逃走した容疑者と同じ服装だった
    • 盗まれた自転車と特徴が似ていた
    • 深夜に出歩いていることが不審なので声をかけた
    • 防犯のために声をかけた

2、職務質問を拒否して立ち去る(逃げる)とどうなる?

とつぜん警察官から声をかけられれば、誰でも驚いてしまうものです。「逃げる」とまでは考えていなくても、気が動転してその場から立ち去ろうとしてしまうこともあるでしょう。

職務質問を拒否して立ち去ると、どうなるのでしょうか?

  1. (1)その場から立ち去っても違法にはならない

    職務質問は質問を受けた対象者の任意なのだから、職務質問に応じずその場から立ち去る行為に違法性はありません。また、なぜ職務質問に応じないのか、応じることができない理由があるのかといった説明する必要も、法律上は求められていません。

  2. (2)立ち去る(逃げる)際に警察官に対する暴行があると公務執行妨害罪が成立する危険がある

    警察官には、職務質問に際して一定程度の「有形力の行使」が認められています。

    たとえば、職務質問をするにあたって正当な理由があるのにその場から逃走した対象者を追跡して対象者の肩に手をかけて停止させたり、飲酒運転の容疑者が酒気の検知をする際に突如車を発進させようとしたので運転席の窓から手を差し入れてキーを回してエンジンを停止させるといった行為は、必要性・緊急性があり合法です。

    また、警察官職務執行法第2条2項によると、通行人が多く職務質問の対象者が群衆の目にさらされるなどその場での職務質問が対象者に不利である場合や、道路上で停止させたのでそのまま職務質問を継続すれば交通の妨害になるといった場合には、対象者に対して近くの警察署や交番に同行を求める「任意同行」が認められています。

    職務質問やそれに伴う任意同行が適切な職務執行である限り、立ち去る際に警察官を突き飛ばしたり、殴りかかったりすれば、刑法第95条1項の「公務執行妨害罪」が成立する可能性があります

3、職務質問されたときの対応とは

いくら法的な解釈では「任意」といっても、警察官の職務質問を拒んだり、その場から立ち去ったりするのは困難です。

かといって、罪を犯したわけでもなく、あるいは事件の事情を何も知らないにもかかわらず、根掘り葉掘り質問をされるのは嫌だと考えるのも当然の心理です。

では、職務質問されたときはどのように対応すればよいのでしょうか。

  1. (1)素直に応じて疑いを晴らすのが最速の解決になる

    職務質問を終了させる最速の解決方法は「なんら疑いがない」「事件の関係者などではない」と証明することです。

    そのためには、停止の求めには素直に応じ、警察官の質問には答えられる範囲で答えるとよいでしょう。疑いさえ晴れれば職務質問を継続する意味もなくなるので、素早くその場から解放されるはずです。

    ただし、素直に応じるといっても、答えたくない質問には無理に答える必要はありません。

    また、職務質問に付随して「所持品検査」が行われる場合もありますが、職務質問と同じく任意の方法によって行われるものなので、疑いを晴らすために必要な範囲を超えてまで持ち物を明かす必要はありません。

    ただし、所持品検査についても、職務質問と同様、警察官には一定程度の有形力の行使が認められています。

    たとえば、警察官が対象者の許可なく鍵のついていないカバンのチャックを開けて中身をちらっと確認する行為は、本来は裁判官が発する令状によらなければ許可されない「捜索」とまではいえない行為であり適法です

  2. (2)警察官に手を出してはいけない

    職務質問を受けると、不審点を追及しようと難儀な質問を繰り返す警察官にいらだってしまうことも多々あります。

    しかし、怒りに任せて暴力をふるったり、逃げようとして突き飛ばしたりすると、公務執行妨害罪の容疑で現行犯逮捕されてしまうかもしれません。

    公務執行妨害罪には3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金という決して軽くない刑罰が法定されています。

    「警察官に一切手を触れてはいけない」とまでは言わなくても、職務質問を受けている側から積極的に警察官に触れることはトラブル回避のためにも避けたほうが賢明でしょう

  3. (3)スマホで録音・録画しておくのも有効

    職務質問を受けた際に、スマートフォンの録音・録画といった機能を使って状況を記録しておけば、後にトラブルへ発展した場合の証拠になります。

    現場の警察官からは「録音・録画をやめるように」と言われるかもしれませんが、職務質問の状況を記録しておくためとはっきり告げましょう。対象者の承諾がない限り、警察官が録音・録画を止めさせる権限もスマートフォンを取り上げる権限もありません。

    警察官がこのような強硬手段に出ようとしたときこそ、しっかりと記録しておくべきです。

4、不当な職務質問に遭ったら弁護士に相談

職務質問に素直に応じて不審点を解消しようと協力しているのに長時間にわたって解放してくれない、無理やり交番などに連れて行こうとする、無断で持ち物を見られて犯罪の疑いをかけられているといったトラブルは絶えません

不当な職務質問に遭ったら、すぐに弁護士に相談しましょう。

  1. (1)その場に弁護士を呼ぶことで解決が期待できる

    素早く疑いを晴らして職務質問から解放されようと、任意の職務質問に素直に協力しても、執拗(しつよう)な質問攻めに遭い、なかなか解放してもらえないといったケースが多くあります。

    もし警察官が職務質問から解放してくれない場合は、その場で弁護士に電話をかけて相談し、ただちにその場へと駆けつけてもらうと、素早い解決が期待できます

    弁護士が間に入り、法的な根拠を示して職務質問の継続を拒むことで、職務質問を終わらせることができるでしょう。

  2. (2)無実の容疑を晴らすサポートが期待できる

    警察官が執拗に質問を繰り返して対象者を足止めしているときは、逮捕を検討しているおそれもあります。

    無実の容疑を晴らすために抵抗することなく素直に応じていても、任意同行を求められ長時間の取り調べを強いられたり、その場で現行犯逮捕されてしまったりするかもしれません。

    職務質問を受けている状況で弁護士を呼べば、容疑を晴らすためのサポートが期待できます。警察官の誤った判断を指摘し、犯罪の容疑がないことや、事件に無関係であることを証明できれば、任意同行や逮捕といった不利な処分を回避できる可能性が高まるでしょう。

    大切なのは、不用意な発言によって容疑を強めてしまう事態を避けることです。

    弁護士に連絡して助けを呼んだら、その後は警察官の質問に対して「弁護士が来たら答えます」とだけ回答して、不利になってしまう発言は控えましょう。

5、まとめ

「職務質問」は法律によって警察官に与えられた権限です。

ただし、あくまでも任意の警察活動であり、強制的な力は与えられていません。とはいえ、職務質問を拒んだり、その場から立ち去ったりするのは得策ではないので、素直に応じて容疑を晴らす方が望ましいでしょう。

その際、執拗な職務質問によって強制的に足止めを受けたり、無実であるのに容疑をかけられたりするなら、ただちに弁護士に連絡して助けを求めましょう。警察官の職務質問への対応でお困りなら、ベリーベスト法律事務所 錦糸町オフィスにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています