盗撮で任意同行を求められたら拒否は可能? 出頭や逮捕との違い

2025年09月08日
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盗撮で任意同行を求められたら拒否は可能? 出頭や逮捕との違い

令和5年(2023年)7月に、盗撮を処罰する「撮影罪(性的姿態等撮影罪)」が新設されました。これまで盗撮行為は、迷惑防止条例や軽犯罪法、住居侵入罪などに問われてきましたが、新たな刑事罰が規定されたことで厳しい処分を受けることになります。

盗撮の容疑で、警察官から任意同行を求められたら、逮捕される不安から拒否したいと思うかもしれません。では、任意同行は拒否しても問題ないのでしょうか。

この記事では、任意同行とはどのようなものか、盗撮で任意同行に応じると逮捕されてしまうのか、任意同行後の手続きの流れなどをベリーベスト法律事務所 錦糸町オフィスの弁護士がわかりやすく解説します。


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1、任意同行とは? 出頭や逮捕との違い

まずは任意同行の意味や求められる理由、任意出頭や逮捕との違いについて解説します。

  1. (1)任意同行とは?

    任意同行とは、警察官の求めに応じて警察官と一緒に警察署に同行することを指します
    任意同行が認められるのは、「職務質問に付随する場合」、または「特定の犯罪の嫌疑がある場合」のいずれかの理由がある場合です。

    警察官職務執行法(警職法)は、警察官が異常な挙動その他周囲の事情から判断して、以下に該当する者を「停止させて質問することができる」と規定しています(同法第2条第1項)。
    これが、いわゆる「職務質問」です。

    • 何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者
    • 既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者

    このとき、その場において職務質問をすることが本人に不利であったり、交通妨害になったりする場合には、質問を適切に実施するために相当な範囲で警察署への同行を求めることを許容しています(同条第2項)。

    また、すでに特定の犯罪の嫌疑がある人物に対しては、捜査のため警察官から任意同行を求めることが認められています(刑事訴訟法第198条第1項本文)。

  2. (2)任意出頭や逮捕との違い

    任意同行と混同して捉えられていることが多いのが、「任意出頭」や「逮捕」です。

    「任意出頭」とは、捜査機関の求めに応じて、自らの意思により警察署などに出向くことをいいます。
    そして「逮捕」とは、被疑者の身体を拘束する強制処分のことです。

    逮捕には、「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」という3種類があります
    「現行犯逮捕」は、その名のとおり、犯行中や犯行の直後など、犯行をしたことが明らかな場合に認められています。

    捜査等の結果、逮捕する場合は「通常逮捕」されることになります。通常逮捕は、令状主義が適用されています。令状主義とは、捜査機関から独立した第三者である裁判所が、事前に特定の対象者を逮捕するだけの理由があるか否かを公正中立的な立場から審査し、捜査機関の権限濫用を防ぎ、正当な理由によらない身体拘束を防止することです。

    したがって、もしも任意同行が実質的に逮捕に該当するような場合は、違法な身体拘束と判断されることになります。

    なお、緊急逮捕は、刑の上限が拘禁3年以上となる重大犯罪のケースでのみ、認められています

2、盗撮事件で任意同行を求められたら、拒否することは可能?

盗撮をしてしまい、警察に任意同行を求められた場合に拒否しても良いのでしょうか。そして、任意同行に応じたほうがいい場合についても解説します。

  1. (1)任意同行は拒否することができる

    結論から言うと、任意同行は拒否することができます
    刑事訴訟法では、次のように規定されています。

    (刑事訴訟法第198条第1項)
    検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる

    この「任意」という言葉の意味は、対象者が自発的、能動的な協力姿勢を見せていることではなく、あくまで「強制手段にわたらない」という意味です。

    強制手段に至らない任意手段については、必要性や緊急性などを考慮したうえ、具体的な状況のもとで相当と認められる限度で許容されています。

    一方で「強制手段」とは、個人の意思を制圧し、身体や住居、財産などの重要な権利利益に制約を加えて、強制的に捜査目的を実現する行為などを指し、特別な根拠規定がなければ許容することができない処分です(刑事訴訟法第197条第1項但書)。

    拒否する本人を拘束して無理やり警察署に連行することはできないため、本人が任意同行に応じない意思を表明している場合、捜査機関は、同行するよう説得することはできても、無理に同行を求めることはできません。
    強制的に本人を連行する場合は、捜査機関は裁判所が発する逮捕許可状(令状)を得て、適法に逮捕手続を踏む必要があります。

  2. (2)任意同行に応じたほうがいい場合とは

    任意同行を拒否することはできますが、拒否することが賢明であるか否かについてはケースによって異なります。

    任意同行に応じたほうが良いケースとしては、実際に盗撮行為をしているところを目撃されている場合や、目撃証言や防犯カメラなどの証拠からご自身に嫌疑がかけられている場合など、盗撮行為をしたのが明らかなときです。

    このようなケースにおいては、任意同行を拒否したとしても、後日令状を持った捜査官が訪れる可能性は高いといえます

    令状は拒否することができません。任意同行を拒否して逮捕された場合、任意同行を拒否したという捜査に非協力的な姿勢から、逃亡や罪証隠滅のおそれが高いとして、身体拘束期間が長期化するおそれがあります。

    状況を把握できないまま、むやみに拒否すると不利に働く可能性もあるため、任意同行を求められたら弁護士に相談するのが良いでしょう

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3、任意同行に応じた後の流れ|在宅事件・逮捕

任意同行に応じた後は、逮捕されるか身柄を拘束されない在宅事件として捜査が進みます。それぞれの流れと違い、有罪になった場合の刑罰について解説します。

  1. (1)任意同行後から在宅事件になった場合の流れ

    盗撮事件を起こし任意同行を求められたものの、逃亡や証拠隠滅などのおそれがないとして逮捕されなければ、在宅事件として捜査が進められます

    在宅事件の場合には、これまで通りの日常生活を送りながら、呼出しを受けたら出頭し取調べや捜査に対応することになります。警察で数回取調べを受けた後、事件は検察に送られます。

    検察による取調べに呼ばれた場合には、起訴するか、不起訴にするかの判断が近いと考えられます。

    なお、在宅事件の場合、逮捕(身柄事件)とは異なり身体拘束に伴う時間制限のルールが適用されません。したがって、警察官からの連絡がないため不起訴になったのだろうと思い込んでいたところ、突然検察庁から呼出しがかかるという事案も少なくありません

  2. (2)任意同行後から逮捕された場合の流れ

    任意同行後に逮捕された場合は、身体拘束から48時間以内を限度にして、警察官による取調べが行われ、事件を検察に送る(送検)かが判断されます。

    なお、身柄は送検されず、書類や証拠のみが送られた場合は、この時点で在宅事件に切り替わります。

    警察から身柄を送検された場合、検察官は事件を受け取ったときから24時間以内を限度に、勾留するかの判断を行います。

    勾留が認められた場合には、最長で逮捕から23日間にわたって身体拘束が続く可能性があります。
    勾留期間中に、検察官は起訴するか不起訴にするかを判断します。

    起訴された場合、刑事裁判を待つ身となりますが、保釈されない限り、基本的には判決まで身体拘束が継続することになります。

    一般的に起訴から1〜2か月程度で公判が開かれ、自白している事件の場合には2週間程度で判決が言い渡されることになることが多いです。

  3. (3)盗撮で有罪となった場合の刑罰

    盗撮行為は、性的姿態等撮影罪にあたります。同罪の法定刑は、「3年以下の拘禁刑」または「300万円以下の罰金」です。

4、盗撮事件の任意同行は弁護士に相談を

盗撮事件について、任意同行を求められた場合は、弁護士に相談することをご検討ください

弁護士は、任意同行に付き添うことが可能です。同席はできませんが、事前に取調べに対するアドバイスを受けることができれば、何を聞かれる可能性があり、何を話すべきなのか整理することができるので、落ち着いて対応できるでしょう。

また、弁護士が付き添っているという事実が捜査機関への抑制にもなるので、不当な取調べや長時間にわたる拘束などを回避できることに期待できます。

任意同行において適切な対応ができなければ、逮捕されてしまい長期間身柄を拘束される可能性もあります。身柄拘束が長期にわたれば、仕事に行くこともできないため社会生活に与えるマイナスの影響は避けられません。

そのような事態を防ぐためにも、まずは弁護士へご相談ください。

5、まとめ

盗撮行為は撮影罪に問われます。刑務所に収監される可能性もある非常に厳しい罪であることを、認識しておくべきでしょう。

盗撮事件を起こして警察官から任意同行を求められた、または求められるのではないかと不安を抱えている場合は、刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所へご相談ください。捜査状況などを把握し、今後の手続の流れや適切な対応の仕方についてアドバイスができるのは弁護士だけです

刑事事件は、初動が非常に重要です。盗撮事件でお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 錦糸町オフィスまで、お問い合わせください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています