ネットストーカーとは? ストーカーとされる行為の内容や罰則を解説

2021年10月19日
  • その他
  • ネットストーカー
  • どこから
ネットストーカーとは? ストーカーとされる行為の内容や罰則を解説

警視庁のホームページで公開されている「ストーカー事案の概況」によると、令和2年中に警視庁に寄せられたストーカー被害の相談件数は1232件でした。法律に基づく警告は495件、禁止命令は137件で、いずれも前年に比べて増加しています。

依然として多数のストーカー事案が発生しているなかで、新たにネットストーカーという行為に注目が集まっています。総務省が開設している「国民のための情報セキュリティサイト」でもネットストーカーの事例を掲載し、注意を喚起しています。

ネットストーカーに対する認知が広まるにつれ、自分の行為が思いがけずネットストーカーに該当してしまうケースもあります。では、具体的に、ネットストーカーとは、一体どこからどこまでの行為が当てはまるのでしょうか。

本コラムでは、新たなストーカー行為の形態として注目されているネットストーカーについて紹介しながら、ストーカーとされる行為の内容や罰則、逮捕の危険性などを、ベリーベスト法律事務所 錦糸町オフィスの弁護士が解説します。

1、ネットストーカーとは

まずは、ネットストーカーとはどのような行為を指すのかを確認していきましょう。

  1. (1)ネットストーカーの定義

    現行では、ネットストーカーという用語を定義する法律はありません。一般には、インターネットを悪用してストーカーにあたる行為をはたらくことをネットストーカーと呼びます。また、正確な定義が存在しないので、別名としてサイバーストーカーと呼ぶこともあります。

  2. (2)ネットストーカーの具体例

    ネットストーカーにあたる行為としては、次のようなケースが典型例といえます。

    • 特定の相手に対してメールやLINEなどのアプリケーションを使ってしつこく復縁を迫る
    • 特定の相手を標的に、ブログやSNSに好意を寄せる内容のコメントを執拗(しつよう)に投稿する
    • 住居や勤務先などの個人情報をブログ・SNSなどで拡散する
    • 匿名のインターネット掲示板に誹謗中傷や個人情報を投稿する
    • ブログ・SNSなどを乗っ取って不適切な内容を投稿する


    以前からストーカーと呼ばれていた行為のうち、インターネットを悪用したものが特にネットストーカーと呼ばれています。

2、ストーカーとされる行為の内容と罰則

ネットストーカーは、前提として「ストーカー行為」にあたることが条件となります。ストーカーとされる行為の内容や罰則を確認しておきましょう。

  1. (1)「つきまとい等」を繰り返すと「ストーカー行為」になる

    ストーカーに関する規制を設けている法律は「ストーカー行為等の規制等に関する法律(通称:ストーカー規制法)」です。

    ストーカー規制法では、2つの行為を規制の対象としています。

    • つきまとい等
    • ストーカー行為


    一般に、ストーカーといわれる行為は、つきまとい等にあたるものです。そして、つきまとい等にあたる行為を繰り返しておこなうことをストーカー行為と呼びます。

    単発のつきまとい等はストーカー行為とは呼びません。ただし、つきまとい等がある場合は、被害者の申し出などによって警察から警告・禁止命令が出る場合があります。

    ストーカー規制法が処罰の対象としているのは、ストーカー行為があった場合と、禁止命令に違反した場合に限られますつきまとい等があっただけでは、ただちに処罰の対象になるわけではありません

  2. (2)「つきまとい等」にあたる8つの行為

    つきまとい等にあたるのは、対象者への恋愛感情などの好意の感情やそれが満たされなかったことに対して恨みの感情をはらす目的で、次の8つの行為をはたらいた場合です。
    対象者に対する行為のみならず、対象者と社会生活において密接な関係を持つ者(配偶者や同居の親族など)に対して当該行為をはたらいた場合も含みます。

    ① つきまとい・待ち伏せ・押し掛け・うろつき等
    自宅や学校、勤務先などの周辺で待ち伏せをする、行動を尾行する、おしかける、うろつくといった行為が該当します。

    ② 監視していると告げる行為
    行動を常に監視している、あるいは監視していると感じさせるようなことを告げる行為です。ストーカー規制法が制定された当初は、帰宅にあわせて「おかえり」とFAXを送信する、「◯月◯日、△△にいたよね?」と口頭で告げるといった行為が典型的でした。近年では、メール・チャット・SNSの投稿やダイレクトメッセージ機能を使った事例が多く、ネットストーカーにあたる形態のひとつです。

    ③ 面会や交際の要求
    復縁や交際を迫る、「会いたい」と執拗に求めるなどの行為が該当します。元交際相手に対して「ヨリを戻したい」と何度もメッセージを送信する行為はネットストーカーにあたるでしょう。

    ④ 乱暴な言動
    相手の自宅前で大声を出して暴言を吐いたり車のクラクションを鳴らし続けたりする行為が該当します。

    ⑤ 無言電話・拒否後の連続した電話・FAX・電子メール・SNS等
    度重なる無言電話や相手が拒否しているにもかかわらず電話を繰り返すなどの行為ですメール・チャット・SNSなどを用いた場合も該当するため、ネットストーカーの典型的な行為のひとつだといえます

    ⑥ 汚物等の送付
    動物の死骸など、相手に不快感を与えるものを自宅などに送りつける行為です。

    ⑦ 名誉を傷つける
    大勢の前で相手の名誉を傷つける事実を明かす、暴露されたくない情報を明かしたビラをばらまくといった行為が考えられます。SNSなどを用いて社会的な評価をおとしめるような内容を投稿する行為も該当するため、ネットストーカーにあたるひとつの形態だといえます。

    ⑧ 性的しゅう恥心の侵害
    交際時に撮影したわいせつな画像を送りつけるなどの行為が該当しますインターネット上にわいせつな画像などを拡散する、相手にわいせつな画像を送りつけて「この画像を拡散するぞ」と脅すといった行為は、リベンジポルノとして厳しく処罰される危険があります

    ただし、①~④と⑤のうち拒絶後の連続した電子メール・メッセージ・SNSやブログへのコメント送信は、身体の安全、住居などの平穏もしくは名誉が害され、または行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法でおこなわれた場合に限ります。

  3. (3)ストーカー行為への罰則

    ストーカー行為をはたらいた者には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。

    また、禁止命令に違反してつきまとい等のストーカー行為を繰り返しはたらいた場合は、さらに厳しく2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科せられます。

    禁止命令を受けたうえでほかのつきまとい等にあたる行為があった場合は、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金です。

3、ストーカー規制法は改正を繰り返して厳罰化されている

ストーカー行為を罰するストーカー規制法は、平成12年の施行から何度かの法改正が加えられて現在のかたちになっています。これは、ストーカー規制法が誕生した経緯や目的が大きく関係しています。

  1. (1)時代の変化とともに規制内容が変化している

    ストーカー規制法は、交際を絶たれたことを逆恨みした男が女子大生を刺殺した、通称、桶川ストーカー殺人事件の発生(平成11年)を契機に制定された法律です。

    その後、平成24年に発生した逗子ストーカー殺人事件を契機に電子メールの連続送信がつきまとい等に追加され、平成28年に発生した小金井ストーカー殺人未遂事件を教訓にブログやSNSでのメッセージの連続送信がつきまとい等に追加されました。

    また、制定当時のストーカー規制法は検察官が起訴する際に被害者の告訴を要する「親告罪」と規定されていましたが、平成29年の改正法の施行により非親告罪となり、法定刑も引き上げられています。

  2. (2)令和3年最新の改正でGPSの悪用が規制対象に追加

    令和3年2月には、国会に提出するストーカー規制法の改正法案が閣議決定しました。

    この改正では、位置情報を知らせる「GPS」機器を相手の車に取り付ける、スマートフォンにインストールしたアプリなどの所持品から位置情報を無断で取得するといった行為が規制対象に加えられています。なお、法律の条文に「GPS」と明記してしまうと、さらに別の技術が発展した場合に対応が遅れてしまうため、条文に使用する文言を「位置情報記録・送信装置」とするなどの対策も講じられます。

    さらに、つきまとい等を規制する場所に「現に所在する場所の付近」を追加する、手紙・文書の連続送付を規制対象に追加することも決定しました。

    これまでも比較的に柔軟な法改正が加えられてきた経緯に照らすと、今後も規制行為の拡大や厳罰化を盛り込んだ法改正がおこなわれる可能性は高いでしょう。

4、ネットストーカーにあたる行為があると逮捕されるのか?

ネットストーカーにあたる行為をすると、ただちに警察に逮捕されてしまうのでしょうか?

  1. (1)必ず逮捕されるわけではない

    ストーカー規制法の定めをみると、たとえば元交際相手に対してLINEなどを使って「ヨリを戻したい」というメッセージを何度も送信する行為はネットストーカーにあたります。自分がした行為がネットストーカーにあたり「警察に逮捕されるのではないか?」と強い不安を感じている方も少なくないでしょう。

    しかし、ストーカー規制法に違反する行為があったとしても、必ず逮捕されるわけではありません。

    逮捕は、被疑者の逃亡・証拠隠滅を防ぐ必要がある場合に限って認められる強制処分です。言いかえれば、逃亡・証拠隠滅を図るおそれがない被疑者を、捜査機関が逮捕することはできません。

  2. (2)警告・禁止命令を無視すると逮捕の危険が高まる

    つきまとい等の被害に遭っていることを被害者が警察に相談すると、警察は被害者の意向に沿って次の3つのうちいずれかの対応を取ることになります。

    ● 援助
    被害を自ら防止するための措置を教示する

    ● 警告の発出
    警察署長から加害者に対する警告の発出する

    ● 禁止命令の発出
    すでに発生しているつきまとい等について、公安委員会が当該つきまとい等にあたる行為を禁止する命令を発出する


    被害者が警告を申し出た場合は警察署に呼び出されて警告を受けますが、これを無視してつきまとい等にあたる行為を繰り返せばストーカー行為となります。

    警察からの警告を受けてもストーカー行為をはたらけば、被害者の安全を保護する意味でも逮捕される可能性が高まるでしょう。さらに公安委員会からの禁止命令に違反してつきまとい等を繰り返した場合も、やはり悪質だととらえられるため、逮捕される可能性が高くなります。

  3. (3)ネットストーカーの疑いをかけられたら弁護士に相談を

    ストーカーの容疑をかけられてしまった場合にまず優先すべきは「被害者に接触しない・近寄らない」ことです。
    弁解を尽くすために相手に連絡を取ろうとしたり、相手の自宅などに押し掛けてしまったりすると、逮捕の危険はより高まってしまいます。

    ネットストーカーの容疑による逮捕や厳しすぎる刑罰を回避したいなら、被害者との示談交渉が欠かせません。まずは弁護士に相談し、示談交渉の代理を依頼しましょう。示談交渉を弁護士に一任すれば、被害者との接触を避けながら安全に示談成立を目指せます。

    容疑をかけられてしまった立場としての正しい行動や、警察の警告・取り調べへの対応についてもアドバイスが得られるので、ただちに刑事事件の解決実績が豊富な弁護士に相談しましょう

5、まとめ

インターネットを悪用したつきまとい等・ストーカー行為をはたらくことを、一般にネットストーカーと呼びます。元交際相手に復縁を迫るメールを何度も送る、意中の相手に対してLINEなどで交際を求めるメッセージを何度も送信するといった行為は、ネットストーカーにあたるおそれがあります。

ストーカー規制法による処罰の対象であり、逮捕や厳しい刑罰を受ける危険があるため、相手との接触を避けたうえで、弁護士に相談してアドバイスを求めましょう。ネットストーカーの容疑をかけられてしまい、逮捕や刑罰に不安を感じているなら、まずは刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所 錦糸町オフィスにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています