法律を知らなかったと言っても通用しない! 典型的なケースとは?
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政府が公開している行政情報のポータルサイト「e-Gov」によると、令和4年12月現在の現行法令数は憲法が1、法律が2097、政令が2268など、合計8900以上にのぼります。さらに全国の条例・例規は138万以上で、すべての法令を知り尽くしたうえで定めを守ることなど不可能なのかもしれません。
錦糸町では抜き打ちで悪質客引き対策などの取り締まりがおこなわれていますが、どのような行為が違法になるのかをよく知らなかったのに逮捕されたというケースは少なくないのかもしれません。
本コラムでは、法律を知らなかった場合でも罪になるのか、法律の定めを知らなかったという言い訳は通用するのかを、ベリーベスト法律事務所 錦糸町オフィスの弁護士が解説します。
1、「法律を知らなかった」で罪は免れるのか?
国が定める法令や都道府県などの自治体が定める条例を含めると、今この社会に存在する法律を正確に把握し、そのすべての内容を知って理解することはおよそ不可能です。
とすれば、法律の定めを知らなかったばかりに、思いがけず「違反してしまった」というケースもあるはずです。
しかし、法律の原則としては「知らなかった」では罪を免れることはできません。
刑法第38条には「故意」についての規定があります。同条1項には「罪を犯す意思がない行為は罰しない」との定めがあるので、わざとではない行為は基本的に罪を問われません。ただし、同条3項には「法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない」とも明記されています。つまり、法律を知らず、違法とは思わなかった場合であっても、原則として処罰の対象となります。
刑法第38条3項には、あわせて「ただし、情状により、その刑を減軽することができる」とも明記されているので、最終的に下される刑罰は軽くなる可能性がありますが、あくまでも、減軽されるかどうかは裁判官の判断次第となります。
2、「知らなかった」では許されない! 罪に問われやすい典型的なケース
法律や条例の文言は独特な表現や言い回しが使われているものが多いので、内容を理解するのが難しいものもあります。しかし、基本的には「知らなかったでは許されない」という考え方なので、わざとではなくても罪を問われます。
「知らなかった」では許されることのない、典型的なケースを挙げていきましょう。
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(1)アルバイト感覚で特殊詐欺に加担してしまった
SNSなどを通じて「簡単な荷物の受け取り」や「預かったキャッシュカードからお金をおろして運ぶだけ」といったアルバイトの募集をみてコンタクトを取ると、振り込め詐欺などの特殊詐欺に加担することになるもしれません。
特殊詐欺の受け子や出し子として加担すると、たとえ詐欺だとは知らなくても、短時間で異常な高収入を得られることからすると、「なにか悪いことをしているのかもしれない」という認識は持てたのではないかと評価されるという構図です。
詐欺罪には、10年以下の懲役が科せられます。有罪判決を受けると必ず懲役が言い渡されることになり、執行猶予がつかなければ刑務所への収監は避けられない重罪です。 -
(2)ごみを正しくない方法で捨てた
家庭ごみ・事業ごみに関わらず、誰であってもみだりに廃棄物を捨ててはいけません。ごみを正しくない方法で捨てると、いわゆる「不法投棄」となり、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の違反として処罰されます。
ごみを自宅の敷地内で焼却したり、自分の土地だからといってごみを集積していたりしても違反です。
当然、この定めを知らなかったとしても処罰の対象となり、5年以下の懲役または1000万円以下の罰金が科せられます。 -
(3)従業員に残業代を支払わずサービス残業させた
会社を経営して従業員を雇っている場合は、原則として、一日につき8時間、一週間につき40時間を超えて働かせてはいけません。
労使の間で協定を結んでいれば時間外労働、いわゆる「残業」も可能ですが、その際は法律で定められた割増賃金を支払う必要があります。時間外労働に対する賃金を支払わない、あるいは割増賃金を支払わないサービス残業は労働基準法違反です。
罰則は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金で、この定めを知らなかったとしても、当然に処罰の対象になります。
3、警察から連絡が来た! その後の流れ
違法行為を行ったことが発覚すると、その後はどうなるのでしょうか?
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(1)取り調べなどの捜査を受ける
市中で起きた犯罪を捜査するのは、主に警察の役目です。また、労働問題や脱税など、専門的な知識を要する捜査は労働基準監督署や税務署が管轄することもあります。
取り調べでは、容疑をかけられている犯罪についての認否の確認、犯行の動機や背景、実際に犯行を行ったときの状況や流れ、犯行後の行動、共犯者の有無などを厳しく追及されることになるでしょう。
犯罪の内容によっては、犯行現場に赴いて実況見分が実施されたり、証拠物などについて鑑定などがおこなわれたりもします。 -
(2)必要に応じて逮捕されることもある
警察の捜査は「できる限り任意の方法で」というルールがありますので、在宅事件として容疑者を呼び出して取調べをし、終了したら帰宅させるという方法をとるのが原則といえます。
しかし、容疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があり、逃亡したり、証拠を隠滅したりするおそれがないとはいえない場合には、裁判官の発する令状に基づいて逮捕することが可能です。したがって、警察がこの手続きを選択した場合には、容疑者は逮捕され、大半が警察署施設内にある留置場に収容され取調べを受けることになります。
逮捕による身体拘束の効力は、警察の段階で48時間以内、検察官の段階で24時間以内です。ここで検察官が裁判官に対して、より長期間の身体拘束手続きである「勾留」を請求し、裁判官がこれを許可すると、原則10日間、勾留の延長期間を含めて最長20日間にわたって身柄を拘束されます。 -
(3)検察官が起訴・不起訴を判断する
警察などの捜査が終了すると、事件は検察官へと引き継がれます。
事件の引き継ぎを受けた検察官は、みずからも取り調べなどの捜査を進めたうえで、起訴するか、不起訴にするのかを判断します。起訴処分には、法廷で裁判が開かれる公判請求と、裁判が開かれず書類審査で罰金が科される略式命令請求があります。この起訴・不起訴の判断を下せるのは検察官だけです(刑事訴訟法248条)。 -
(4)刑事裁判が開かれる
検察官が起訴をして公判請求をすると、刑事裁判が開かれます。
刑事裁判では、法律で定められた所定の手続きを経たうえで、裁判官が証拠にもとづいて起訴された人物が有罪か無罪かを審理し、有罪の場合は法律が定める範囲で量刑を言い渡します。
4、不安を感じたら今すぐ弁護士に相談を!
法律を知らなかったばかりに犯罪の容疑をかけられてしまい今後の捜査や逮捕に不安を感じているなら、今すぐ弁護士に相談してサポートを求めましょう。
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(1)どのような行為が問題となるのかが明確になる
多岐にわたる法律を正確に理解し、どのような行為が違法になるのかを把握するのは簡単ではありません。
自分の行為に違法性があるのか、違法だとすればどのような行為が問題となるのかが分からない場合は、弁護士に相談することで問題点が明確になります。
とくに、許認可を必要とする事業を営んでいたり、従業員を雇っていたりする事業主は、順守すべき法令も多く「知らなかった」という事態も起きやすいので、わからないことや不安なことがあれば弁護士に相談するとよいでしょう。 -
(2)すでに犯した罪の解決サポートが期待できる
「法律を知らなかった」「違法だとは思わなかった」と言い訳は、警察・検察官などの捜査機関や裁判官にはそう簡単に通用しません。罪を犯したという事実があれば、所要の捜査がおこなわれ、刑事裁判に発展して刑罰を科せられるおそれがあります。
ただし、違法な行為があったからといって、必ずしも逮捕されたり、刑罰を受けたりするといった不利益を受けるわけでもありません。
たとえば、早い段階で被害者との示談交渉を尽くし、被害届の提出や刑事告訴しないように合意することで、捜査機関に発覚してしまう事態を阻止できる可能性があります。
また、法律を知らなかったために違法な状態があったものの、正しく理解したうえで是正したなどの事情を事後的に訴えることなどにより、起訴するまでもないと判断されて、刑事裁判が見送られるという展開も期待できるかもしれません。
刑事事件を有利なかたちで解決するには、弁護士のサポートが重要です。被害者との示談交渉、逮捕を避けるための対策、起訴の回避に向けたはたらきかけなどの対策を尽くせば、大きな不利益を被ることなく事件を解決できる可能性が高まります。
たとえ有罪であり刑罰は免れられないとしても、状況次第では「減軽」が適用されるかもしれません。減軽を得るには、被告人にとって有利な事情をそろえて裁判官に示す必要があるので、弁護士のサポートが大変重要になります。
5、まとめ
たとえ法律を知らず、違法ではないと思っていた場合であっても、それを理由に罪を免れることは原則としてできません。警察・検察官などの捜査機関や裁判官に「違法だとは知りませんでした」と言い訳をしても通用しないので、捜査の対象となり、逮捕や刑罰を受けるといった危険があります。
ただし、法律の定めに反して罪を犯したとしても、必ずしも厳罰を受けるわけではありません。正しく対応することで、逮捕や刑罰を回避したり、刑罰が軽くなったりする可能性が残されています。
法律を知らなかったために罪を犯してしまった、自分の行為が違法なのかを知りたいなどのお悩みを抱えているなら、弁護士に相談してサポートを受けましょう。
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- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています