2回目の万引きは実刑になる? 再犯の場合は刑罰が重くなるのか

2023年05月11日
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2回目の万引きは実刑になる? 再犯の場合は刑罰が重くなるのか

警視庁は「万引きをしない、させない、見逃さない」をスローガンに、万引き防止対策を呼びかけています。令和5年2月には「万引き防止広報キャンペーン」を実施し、墨田区内の各所でも「万引きに、ぜったい負けない」と銘打ったポスターが掲示されたり、SNSで情報が発信されたりしました。

一方、令和3年の「窃盗の認知状況(警視庁)」によると、非侵入の窃盗の手口の中で、万引きは自転車盗につぐ9929件が認知されています。中には、以前も万引きで捕まり、2回目の検挙になってしまったというケースも少なくないでしょう。

万引きも2回目となれば厳しい対応になるおそれがあります。本コラムでは、2回目の犯行が発覚したときの万引きの処分について、ベリーベスト法律事務所 錦糸町オフィスの弁護士が解説します。

1、2回目の万引きで捕まった! 罪は重くなる?

「万引き」をちょっとしたイタズラの類いだと勘違いしてはいけません。万引きはれっきとした犯罪行為です。

初めて万引きが発覚した際に厳しい処分を受けなかったからといって、2回目以降も同じように許されると思っていると思わぬ事態を招いてしまいます。

  1. (1)万引きは「窃盗罪」

    万引きとは、スーパーやコンビニなどの小売店で陳列されている商品を盗む行為です。この行為を刑法に照らすと、第235条の「窃盗罪」にあたります。

    罪名だけをみれば、満員電車の混雑に乗じて他人の財布を盗んだり、留守宅に侵入して金品を盗んだりする行為と変わりはありません。

  2. (2)窃盗罪の刑罰

    窃盗罪の刑罰は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

    もともと、窃盗罪には懲役しか規定されていませんでした。しかし、初犯であったり、被害が少額であったりした場合に検察官が起訴をためらってしまい、結果として「捕まったが処分を受けなかった」という経験から万引きを繰り返してしまうという問題が発生したため、平成18年の改正によって罰金の規定が追加されました。

    結果として、刑罰の選択肢として罰金が追加されたことで、軽微な万引き事件でも刑罰が科せられやすくなりました

  3. (3)万引きにおける再犯の考え方

    一般的に「再犯」とは、その名のとおり「再び罪を犯すこと」だと解釈されています。

    たとえば、以前に万引きが発覚して事件になり、さらに2回目の万引きが発覚すると「再犯」にあたると考えるかもしれませんが、実はその解釈は正しくありません。

    刑法における「再犯」とは、刑法第56条1項の規定によると、「懲役に処せられた者がその執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するとき」を意味します。単に2回目以降を再犯と呼ぶわけではありません。

  4. (4)微罪処分は期待できない

    少額の万引き事件では、初犯で反省と謝罪・弁済が尽くされている場合に限って検察官へと送致せず警察限りで処理を終わらせる「微罪処分」で済まされる可能性があります。微罪処分になった場合は、刑罰は受けず、前科もつきません。

    ただし、微罪処分は「二度目はない」のが基本です。すでに一度は微罪処分となったうえで2回目の万引きが発覚した場合は、微罪処分では処理されません。

    微罪処分で許されるのは一度だけだと心得ておきましょう。

2、執行猶予期間中に捕まると執行猶予は取り消される?

万引きで執行猶予付きの有罪判決を受け、再び万引きで捕まってしまうと、どうなってしまうのでしょうか?

  1. (1)執行猶予期間中に万引きが発覚した場合

    執行猶予の期間中に万引きが発覚した場合は、執行猶予が取り消されてしまうかもしれません

    執行猶予期間中にさらに罪を犯して禁錮以上の刑に処されると、刑法第26条1号の規定に従って執行猶予が取り消されます。

    不起訴となって刑事裁判に発展しなかったり、起訴されてもさらに執行猶予が付されたりした場合は執行猶予が取り消されず、罰金が科せられたときでも裁判官の判断次第では執行猶予の取り消しを免れる場合もあります。しかし、執行猶予期間中の犯行であれば寛大な処分で済まされる可能性は低いでしょう。

    執行猶予が取り消されると、以前の懲役に加えて新たな罪の懲役が科せられるので、長期の服役を覚悟する必要があります。

  2. (2)執行猶予が終わったあとで発覚した場合

    執行猶予の期間が終わると、以前に言い渡された判決の効力は消滅します。期間が満了したあとで新たに罪を犯しても、さかのぼって執行猶予が取り消されることはありません。

    ただし、執行猶予の期間を終えて5年以内に再び万引きを犯してしまうと、刑法上の再犯となります。刑法上の再犯が適用されると、刑法第57条の「再犯加重」の規定によって、新たな罪の懲役の上限が2倍に引き上げられます。

    窃盗罪の懲役の上限は10年で、再犯では20年以下の懲役となるので、厳しい刑罰を科せられる結果になるでしょう。

3、2回目の万引きでも示談すべき? 厳しい処分は避けられるのか?

万引きが発覚して捕まってしまうのが2回目になると、微罪処分では済まされず、前回の事件の判決によっては執行猶予が取り消されたり、懲役の上限が2倍になったりするなど、不利な状況に追い込まれます。被害者との示談交渉を通じて真摯(しんし)に謝罪し、盗んだ商品を弁済しても、許されないかもしれません。

2回目の万引きでも、示談する必要はあるのでしょうか?

  1. (1)2回目でも真摯に謝罪して弁済すべき

    2回目の万引きだと法的に不利な扱いを避けるのは難しくなるので、わざわざ謝罪したり、商品代金などを弁済したりするのが無駄に感じられるかもしれませんが、その考えは間違いです。

    2回目の万引きだからこそ、積極的に示談交渉を進めるべきだと心得てください

    万引きをして店舗の従業員や警備員などに見つかってしまった場合は、その場でただちに示談交渉を進めることで警察への通報を阻止できるかもしれません。
    事件化を阻止できなかったとしても、示談交渉を通じて謝罪と弁済を尽くすことで情状酌量が認められ、裁判官が再度の執行猶予や罰金といった有利な判決を下す可能性もあります。

  2. (2)示談が成立すればかならず厳罰を避けられるわけではない

    万引き事件を穏便に解決したいなら、被害者との示談は必須です。ただし、示談が成立したからといって、かならずしも厳しい刑罰を避けられるわけではありません。

    刑事事件における示談とは、事件の加害者と被害者が裁判外で話し合いをして解決を図ることを指します。一般的には、加害者が被害者に対して謝罪や弁済を尽くし、許しを請うことだと考えればよいでしょう。

    しかし、示談はあくまでも個人と個人による民事的な解決法です。被害者には「起訴しない」「罪を軽くする」といった処分を決める権限はないので、示談が成立しても検察官が起訴に踏み切って、裁判官が厳しい判断を下すおそれがあります。

    特に、2回目の犯行となれば被害者の許しを得ても捜査機関や裁判官が厳しい処分を下してくる可能性があると考えておくべきです。

4、万引き事件で弁護士がサポートできること

万引き事件の解決には、弁護士のサポートが欠かせません。とくに2回目となれば厳しい処分を避けるのは難しいので、弁護士に相談して助けを求めるべきです。

  1. (1)被害者との示談交渉を依頼できる

    万引き事件を穏便に解決したいなら、被害者との示談交渉を積極的に進めましょう。これはたとえ初めての万引きでも、2回目以降でも同じだと考えてください。

    ただし、2回目の万引きでは、初めてのときよりも素早い示談交渉が求められます。万引きが発覚し、ただちに示談交渉を進めれば、警察に発覚する前に事件を解決できるかもしれません。

    弁護士に依頼すれば、迅速な示談交渉による早期の解決が期待できます。個人で対応していると警察への届け出を阻止できず事件化されてしまう可能性が高いので、弁護士への相談・依頼を急ぎましょう。

  2. (2)厳しい刑罰の回避に向けた弁護活動が期待できる

    さまざまな悪質性の高い犯罪と比べれば、万引きは軽微な犯罪だといえるかもしれません。しかし、刑法の規定に照らせば窃盗罪にあたる行為であり、以前にも万引き事件を起こしていれば厳しく処罰されるおそれがあります。

    厳罰を回避するためにも、弁護士のサポートは必須です。被害者との示談交渉に加えて、家族による監督強化、万引きを繰り返してしまう習癖の治療を目指した医療機関の受診といった取り組みを捜査機関や裁判官に伝えることで、不起訴や執行猶予・罰金といった有利な処分が下される可能性が高まります。

5、まとめ

万引きは比較的に軽微な犯罪であり、初犯なら微罪処分・不起訴・執行猶予・罰金などの寛大な処分で済まされる可能性があります。

ただし、2回目の犯行となれば「反省していない」「厳しく処罰しなければ更生できない」と判断されやすくなるので、厳罰を避けるのは難しいかもしれません。被害者との示談交渉などの対応はスピード勝負になるので、ただちに弁護士に相談してサポートを求めましょう。

万引き事件の穏便な解決は、ベリーベスト法律事務所 錦糸町オフィスにおまかせください。刑事事件の解決実績を豊富に持つ弁護士が、厳しい処分の回避を目指して全力でサポートします。

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