2回目の窃盗の罪の重さはどれくらい?
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令和3年(2021年)に東京都墨田区内で発生した犯罪件数は1832件で、そのうち「窃盗」は1219件と全体の7割近くを占めていました。
以前に1度万引きなどの窃盗を犯して刑罰を受けたにもかかわらず、再び窃盗を犯してしまった場合には、1回目よりも重い刑罰が科される可能性があります。
ただし、2回目の窃盗に対する罪の重さは、前科の内容や時期によって異なります。また、早い段階で弁護士に依頼すれば、弁護活動を通じて寛大な処分を求めることができます。もしご家族が2回目の窃盗で逮捕されてしまった場合には、お早めに弁護士までご相談ください。
今回は、2回目の窃盗が法律上どのように処罰されるのかについて、ベリーベスト法律事務所 錦糸町オフィスの弁護士が解説します。
出典:「行政基礎資料集 令和4年度版」(墨田区)
目次
1、2回目の窃盗は「再犯」に当たる場合がある
2回目の窃盗を犯した場合、刑法上の「再犯」として取り扱われ、法定刑が加重される可能性があります。
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(1)「再犯」の定義
以下の①②をいずれも満たす場合は「再犯」に当たります(刑法第56条)。
① 以下のいずれかの日から5年以内に、さらに罪を犯したこと- 懲役に処せられた者が、その執行を終わった日
- 懲役に処せられた者が、その執行の免除を得た日
- 懲役に当たる罪と同質の罪により死刑に処せられた者が、その執行の免除を得た日
- 懲役に当たる罪と同質の罪により死刑に処せられた者が、減刑により懲役に減軽されて、その執行を終わった日
- 懲役に当たる罪と同質の罪により死刑に処せられた者が、減刑により懲役に減軽されて、その執行の免除を得た日
② 有期懲役に処せられること
再犯の最も典型的なケースは、懲役の実刑判決を受けた者が、出所後5年以内に再度罪を犯し、再び懲役刑を受ける場合です。
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(2)再犯と「前科」の関係性
「前科」とは、過去に刑罰を受けた経歴のことであり、前科に該当するのはすべての刑罰です。もっとも、前科がある人が再び罪を犯した場合でも、そのすべてが「再犯」として取り扱われるわけではありません。再犯に当たる場合とは、上記の条件に当たる場合のみです。
このように、「前科があればすべて再犯」というわけではない点にご注意ください。 -
(3)再犯として取り扱われることのデメリット
2回目の犯罪が再犯に当たる場合、再犯加重によって懲役の長期が2倍以下となります(刑法第57条)。
たとえば窃盗の場合、本来の法定刑は「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」(刑法第235条)ですが、再犯加重がなされる場合は、最長20年の懲役が科される可能性があります。
2、2回目の窃盗の量刑は、前科の内容や時期によって変わる
1回目の窃盗について刑罰を科された後、2回目の窃盗を犯して処罰される場合、その量刑は前科の内容や時期によって変化します。
以下の各ケースについて、刑法に基づく量刑の取り扱いを解説します。
- ① 前科が実刑の場合
- ② 前科の執行猶予中に再び窃盗をした場合
- ③ 前科の執行猶予期間満了後に再び窃盗をした場合
- ④ 前科が罰金刑の場合
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(1)前科が実刑の場合
1回目の窃盗について懲役の実刑判決を受けた場合、2回目の窃盗の時期に応じて、再犯加重がなされるかどうかが異なります。
① 懲役刑の執行を終わった日から5年以内に2回目の窃盗をした場合
再犯加重あり、法定刑は「20年以下の懲役または50万円以下の罰金」
② 懲役刑の執行を終わった日から5年経過後に2回目の窃盗をした場合
再犯加重なし、法定刑は「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」 -
(2)前科の執行猶予中に再び窃盗をした場合
1回目の窃盗について懲役の執行猶予付き判決を受け、執行猶予中に2回目の窃盗を犯した場合、再犯としては取り扱われません。1回目の懲役刑について、執行を終わった(または執行の免除を受けた)わけではないからです。
しかし、2回目の窃盗について懲役の実刑判決に処せられる場合には、1回目の窃盗の執行猶予が取り消されます(刑法第26条第1号、第25条第1項)。
また、2回目の窃盗について罰金に処せられる場合にも、1回目の窃盗の執行猶予が取り消されることがあります(刑法第26条の2第1号)。
執行猶予が取り消された場合、1回目・2回目の各窃盗に係る刑罰が一挙に科されることになります。
(例)
1回目懲役2年+2回目懲役3年→合計で懲役5年 -
(3)前科の執行猶予期間満了後に再び窃盗をした場合
1回目の窃盗について懲役の執行猶予付き判決を受け、執行猶予期間が満了した場合、その時点で刑の言渡しは効力を失い、その後刑が執行されることはありません(刑法第27条)。
したがって、その後に2回目の窃盗を犯したとしても、1回目の窃盗について処罰されることはありません。
また、2回目の窃盗についても再犯として取り扱われることはなく、通常の窃盗として処罰されます(10年以下の懲役または50万円以下の罰金)。 -
(4)前科が罰金刑の場合
1回目の窃盗について罰金刑を受けた場合、2回目の窃盗は再犯として取り扱われません。再犯となるのは、前科が懲役刑の場合に限られるためです。
したがって、2回目の窃盗は通常の窃盗として処罰されます(10年以下の懲役または50万円以下の罰金)。
3、2回目の窃盗で逮捕された場合の刑事手続の流れ
2回目の窃盗で逮捕されてしまった場合、刑事手続は以下の流れで進行します。
- ① 逮捕~勾留請求
- ② 起訴前勾留
- ③ 正式起訴・略式起訴・不起訴
- ④ 起訴後勾留
- ⑤ 公判手続
- ⑥ 判決の確定・刑の執行
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(1)逮捕~勾留請求
逮捕による身柄拘束期間は、最長で72時間です。この間に警察官・検察官による取調べが行われます。
検察官は、罪証隠滅や逃亡を防ぐために身柄拘束を延長すべきと判断した場合、裁判官に対して勾留請求を行います。2回目の窃盗の場合、行為の態様等にもよりますが勾留請求が行われる可能性は比較的高いと思われます。 -
(2)起訴前勾留
裁判官によって勾留状が発せられた場合、被疑者の身柄拘束は逮捕から起訴前勾留へ切り替わります。
起訴前勾留の期間は当初10日間、延長により最長20日間です。この間は引き続き、警察官・検察官による取調べが行われます。 -
(3)正式起訴・略式起訴・不起訴
起訴前勾留期間までの捜査結果を踏まえて、検察官が被疑者を起訴するかどうかを判断します。
起訴する場合は、刑事裁判にかける「正式起訴(=公判請求)」が原則ですが、罰金刑を科す場合は、被疑者に異議がないことを条件に「略式起訴」をすることもできます。
2回目の窃盗の場合は、被害額が少額であるなど軽微な事案を除き、正式起訴となる可能性は高いです。
2回目の窃盗が不起訴となるケースは稀ですが、被害額がきわめて少額で、良い情状が揃っている場合には、不起訴となることがあります。 -
(4)起訴後勾留
被疑者が正式起訴された場合、身柄拘束は起訴後勾留へと切り替わり、被疑者の呼称も「被告人」へと変更されます。
起訴後勾留期間中は、原則として取調べは行われず、被告人は公判手続に向けた準備に専念します。弁護士と相談しながら、どのような方針で公判手続に臨むかを決めましょう。
また、起訴後勾留されている被告人は、裁判所に対して保釈を請求できます(刑事訴訟法第88条、第89条、第90条)。 -
(5)公判手続き
公判手続きは、裁判所の公開法廷で行われます。検察官が犯罪事実を立証し、被告人がそれに反論する形で手続が進行します。
すべての犯罪要件について立証がなされたことを条件に、裁判所は有罪判決を言い渡します。2回目の窃盗の場合、1回目の窃盗について執行猶予中であったり実刑判決を受けた場合などは、懲役の実刑判決が言い渡される可能性が高いです。 -
(6)判決の確定・刑の執行
判決に不服がある場合は、高等裁判所に対する控訴が認められます。さらに控訴審判決に対しては、最高裁判所に対する上告が可能です。
控訴・上告を経て判決が確定し、実刑判決であれば刑が執行されます。
4、2回目の窃盗をしてしまったら弁護士にご相談を
2回目の窃盗を犯してしまった場合は、起訴されて懲役の実刑判決を受ける可能性が高いと思われます。しかし、犯罪の内容や情状によっては、執行猶予付き判決や罰金刑となる可能性も残されているので、早い段階で弁護士にご相談ください。
弁護士は、被害者との示談交渉などを通じて、裁判所に被告人の良い情状をアピールし、寛大な判決が得られるように尽力します。身柄拘束されている最中の家族との連絡についても、弁護士を窓口とすれば弁護士がいつでも接見に行けますので比較的スムーズに行うことが可能です。
ご家族が2回目の窃盗事件で逮捕されてしまったら、すぐに弁護士へご相談ください。
5、まとめ
2回目の窃盗を犯した場合、起訴されて懲役の実刑判決を受ける可能性が高いです。しかし、弁護活動が奏功すれば寛大な判決を得られる可能性があるので、まずは弁護士への相談をおすすめします。
ベリーベスト法律事務所は、刑事事件の被疑者・被告人やご家族からのご相談を随時受け付けております。ご家族が2回目の窃盗で逮捕されてしまったら、早期にベリーベスト法律事務所 錦糸町オフィスへご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています