盗撮で逮捕されたら、その後はどうなる? 弁護士に依頼するべき?

2023年01月26日
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盗撮で逮捕されたら、その後はどうなる? 弁護士に依頼するべき?

平成26年4月、千代田区のJR秋葉原駅のエスカレーターで女性のスカート内を盗撮した男を、偶然居合わせた一般人が確保して現行犯逮捕したというニュースが流れました。盗撮事件で逮捕されるケースのなかでも特にめずらしい事例ですが、この事件のように意外な流れで盗撮が発覚し、逮捕されることもあります。

盗撮が発覚して逮捕されると、その後はどうなるのでしょうか。逮捕されるとどんな罰を受けるのか、前科がついてしまうのかといった点も気になるでしょう。

本コラムでは、盗撮で逮捕されたその後の流れを中心に、逮捕後でも盗撮事件を穏便に解決する方法などをベリーベスト法律事務所 錦糸町オフィスの弁護士が解説します。

1、盗撮で逮捕されるケースと逮捕されないケースの違い

盗撮行為は犯罪です。ただし、どの法律をみても「盗撮罪」という犯罪は存在していません。
盗撮行為で問われる罪は、その場所や状況などに応じて異なります。また、犯罪にあたるといっても、かならず逮捕されるわけではありません

盗撮行為に適用される犯罪と、逮捕されるケース・逮捕されないケースの違いを確認していきましょう。

  1. (1)盗撮行為で問われる罪と罰

    盗撮行為で問われる罪と刑罰の重さは次のとおりです。

    • 迷惑防止条例違反
      人が通常は衣服の全部または一部を着けないでいる風呂・トイレ・更衣室などの場所や、公共の場所や乗り物の中、不特定の人が利用する事務所・学校・タクシーの車内などで、裸や下着姿、スカートの中などを撮影する行為は、東京都の「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(通称:迷惑防止条例)」の違反です。

      盗撮行為そのものを罰する唯一の法規で、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。

    • 建造物侵入罪(刑法第130条)
      不法の目的をもって公共施設・駅構内・商業施設などに侵入した者を罰する犯罪です。これらの場所は利用者や客であれば誰でも自由に出入りできる場所ですが、犯罪を目的とした立ち入りは管理者の意思に反する侵入として扱われます。
      盗撮行為そのものではなく、盗撮を目的とした侵入の部分を罰するものなので、実際に盗撮をしたかどうかは問題になりません。相手に気づかれたので盗撮はやめて未遂で終わったとしても、建造物侵入罪は成立します。

      法律が定める刑罰は、3年以下の懲役または10万円以下の罰金です。

    • 軽犯罪法違反
      正当な理由なく人の住居・浴場・更衣場・便所などをのぞき見した者は「軽犯罪法」の違反になります。
      場所などの要件から迷惑防止条例違反に該当せず、不法な侵入もないため建造物侵入罪も成立しない場合でも、盗撮の前段として存在する「のぞき見」を違法行為として罰するものです。

      罰則は拘留または科料で、日本の法律が定めている刑罰の中では最も軽い刑罰が予定されています。
  2. (2)逮捕されるケース

    逮捕とは、犯罪の疑いがある者について、行動などの自由を制限して身柄を拘束する強制処分です。

    すべての国民は、理由もなく逮捕されない権利が保障されています。逮捕が認められるのは、容疑者が逃亡や証拠隠滅を図るおそれがあり、裁判官が審査したうえで逮捕を許可したときだけです。

    たとえば、盗撮現場から逃げた、事情聴取のための呼び出しに応じなかったといったケースでは、逃亡・証拠隠滅のおそれがあるとして、裁判官が逮捕状を発付する可能性があります。
    これが原則的な「通常逮捕」の流れです。

    ただし、実際の犯罪の現場では、その場に警察官がいないほうが自然であり、逮捕状の請求を待っていては容疑者を取り逃がしてしまうという状況も多いでしょう。

    そこで、まさに今そこで犯罪がおこなっている、または犯罪を終えたばかりの者については、逮捕状を必要としないうえに、警察官でなくても誰でも逮捕できます。これが「現行犯逮捕」です。被害者や盗撮に気づいた周囲の目撃者が容疑者を取り押さえたといったケースが該当します。

    また、現行犯とはいえない状況でも、通常逮捕で求められる疑いよりも濃い容疑性があり、逮捕状の請求・発付を待っていると容疑者を取り逃がしてしまう場合は、逮捕状なしでも逮捕が可能です。
    これを「緊急逮捕」といいます。

    逮捕の時点では逮捕状を必要としない代わりに、逮捕後はただちに逮捕状を請求しなければならず、逮捕状が発付されなかった場合は容疑者を釈放しなければなりません。

    たとえば、盗撮事件が発生したという通報を受けて警察官が付近を捜索したところ、目撃情報と一致する人物を発見して職務質問し、スマホに盗撮画像が保存されていることを確認したといったシチュエーションが想定されます。

  3. (3)逮捕されず在宅捜査になるケース

    犯罪が発覚すれば「逮捕される」と考えている方がいるかもしれませんが、実際は逮捕されない事件のほうが多いというのが現実です。

    令和3年版の犯罪白書によると、令和2年中に全国の検察庁で処理された刑事事件の総数は28万1342件でした。一見、「全国でおよそ28万人も逮捕されている」ように見えますが、警察に逮捕されたのは10万5109件で、うち7426件は警察の段階で釈放されています。

    これをパーセンテージに換算すると、警察に逮捕された事件の割合は37.3%、逮捕後すぐに釈放された事件を除けば34.8%です。つまり、逮捕される割合は「およそ3分の1」になります。

    ただし、逮捕されないからといって罪を問われないわけではありません。逮捕は「逃亡または証拠隠滅を図るおそれ」がある場合に限って許される例外であり、逃げ隠れもせず、証拠も確保されている場合は逮捕されないまま事件が処理されます。この流れを一般的に「在宅捜査」といいます。

    在宅捜査になると、取り調べなどの必要に応じ呼び出しを受けて、警察署や検察庁へ出頭して捜査を受けることになります。

    たとえば、盗撮が発覚した際に素直に罪を認めて素性を明かした、証拠品の提出にもすべて応じたといった状況があれば、逮捕されない可能性が高いでしょう。

2、逮捕されるとどうなる? 刑事事件の流れ

実際の刑事事件では、逮捕されてそこで終わりとなるわけではありません。むしろ、逮捕こそが「刑事手続きのスタート地点」となります。

盗撮事件の容疑者として逮捕されると、その後はどうなるのでしょうか?

  1. (1)逮捕されると72時間以内の身柄拘束を受ける

    警察に逮捕されると、その瞬間からただちに身柄拘束が始まります。警察署の留置場に収容されたうえで事件に関する取り調べがおこなわれるので、自宅へ帰ることも、会社や学校へ行くことも、家族や友人に連絡することもできません。

    この段階で警察に与えられている持ち時間は最大48時間です。48時間を超えるまでに、警察は逮捕した容疑者の身柄と捜査書類を検察官に引き継がなくてはなりません。

    警察から検察官に事件が引き継がれる手続きを「送致」といいます。ニュースなどでは「送検」とも呼ばれており、こちらのほうが聞き覚えのある方も多いでしょう。

    送致を受理した検察官は、さらに容疑者を取り調べたうえで24時間以内に事件の処理方針を検討します。検察官の判断次第ではこの段階で釈放される可能性もありますが、実際にはほとんどの事件で身柄拘束を継続する「勾留」が決定されているのが現実です。

  2. (2)勾留されると10~20日間以内の身柄拘束を受ける

    検察官の請求を受けて裁判官が勾留を許可すると、10日間にわたる身柄拘束が始まります。勾留が決定した容疑者の身柄は警察へと戻され、検察官の指揮を受けながら警察が捜査を進めるので、自由を大幅に制限された日が続くことになるでしょう。

    10日間で捜査が終了しない場合は、一度に限り10日間以内の延長が可能です。

    つまり、勾留による身柄拘束は、初回10日間+延長10日間以内=最大20日間になります。逮捕から数えると72時間+20日間=最大23日間にわたって社会から隔離されてしまうので、家庭・仕事・学校といった社会生活に与える悪影響は甚大です。

    余罪につき再逮捕がなされると、⑴から再度手続が行われますので、身体拘束期間は延びていきます

  3. (3)起訴されると刑事裁判が開かれる

    勾留が満期を迎える日までに、検察官が「起訴」または「不起訴」を決定します。起訴・不起訴を決められるのは検察官だけです。

    起訴されると容疑者の立場は「被告人」となり、刑事裁判を待つ身として勾留され、拘置所へと移送されます。被告人としての勾留にも期限がありますが、刑事裁判が終了するまで延長が可能です。つまり、実質的には刑事裁判が終わるまで無期限で勾留されると考えればよいでしょう。

    初回の刑事裁判は、起訴からおよそ1~2か月後に開かれます。以後、おおむね1か月に一度のペースで公判が開かれ、数回の審理を経て判決が言い渡されるので、刑事裁判が終わるのは起訴から早くても2~3か月後、複雑な事件では半年以上も先です。

3、逮捕されてもかならず前科がつくわけではない

盗撮事件を起こして逮捕に不安を感じている方の中には「前科がつくかもしれない」という点も気がかりになっている方も多いでしょう。たしかに、逮捕されると前科がつく事態につながる危険がありますが、逮捕されたからといってかならず前科がつくわけではありません。

  1. (1)前科とは?

    「前科」とは、法律で定める刑罰を受けた経歴を指します。日本の法律で定めている刑罰は、死刑・懲役・禁錮・罰金・拘留・科料の6つです。

    前科があると、一定の公的な資格を取得できない、あるいは資格を剥奪されてしまう、国によっては渡航制限を受けるといった不利益があります。

    ただし、前科に関する情報は検察庁が厳重に管理しているので、戸籍や住民票に前科が掲載されてしまう、会社や学校が調査を依頼すると前科が公開されるといったことはありません

  2. (2)逮捕と前科の関係

    前科がつくのは、刑事裁判の判決として刑罰が言い渡されて、その刑が確定したときです。つまり、警察に逮捕された段階はまだ刑事裁判が開かれてもいないので、前科はついていません。

    また、逮捕されても、逮捕後すぐに疑いが晴れて釈放された、検察官が不起訴として刑事裁判が開かれなかった、刑事裁判で無罪の言渡しを受けたといったケースでは、刑罰を受けていないので前科はつきません。

    警察に逮捕された経歴を、一般的には「逮捕歴」や「前歴」「犯歴」などと呼びますが、これらは警察が管理しており、前科と同様で公開されることのない機密情報です。警察が管理している犯罪経歴は、警察が捜査の対象として検挙した場合に記録されるものですが、前科のように資格制限や渡航制限を受けることはありません。

    また、警察のデータベースには過去に犯した罪の情報が記録されていますが、逮捕の有無は記録されていません。いわゆる逮捕歴・前歴・犯歴が他人に知られてしまうのは、インターネット上に残ったマスコミの報道や関係者のうわさ話などが原因だと考えておきましょう。

4、盗撮事件を起こしたなら弁護士のサポートが重要

盗撮事件を起こしてしまうと、警察に逮捕されて長期の身柄拘束を受ける、刑罰を受ける、前科がついてしまうなど、社会生活を送るうえでの不利益が生じるおそれがあります。できるだけ穏便に解決し、さまざまな不利益を回避したいと考えるなら、早い段階で弁護士に相談してサポートを受けるべきです。

  1. (1)被害者との示談交渉による穏便な解決が期待できる

    盗撮事件を穏便に解決するうえで最も有効な手段が「被害者との示談交渉」です。

    被害者との話し合いの席を設けて真摯に謝罪したうえで、精神的苦痛に対する慰謝料などを含めた示談金を支払い、許しをもらうことを「示談」といいます。

    あくまでも個人間の話し合いであり、警察・検察官といった捜査機関や裁判所は関与しませんが、民事的な賠償が尽くされたうえで、被害者からの被害届や刑事告訴が取り下げられるのが一般的なので、逮捕や刑罰を回避できる可能性が高まるでしょう。

    ただし、盗撮事件の被害者の多くは、加害者に対して強い怒りや嫌悪の感情を抱いています。加害者本人やその家族などによる交渉では相手にしてもらえなかったり、被害者という立場を強味にして過度の賠償を求められたりといったトラブルも考えられるでしょう。

    安全かつ実りある示談交渉を進めるには、法的な知識が深く、トラブルに対応してきた実績も豊富な弁護士にまかせるのが最善です。

  2. (2)外部と連絡するための橋渡しも依頼できる

    盗撮事件の容疑者として逮捕されると身柄拘束を受けます。逮捕・勾留による身柄拘束を受けている期間は携帯電話・スマートフォンも使えないうえに、面会にも制限があるので、外部との自由な連絡はできません。

    身柄拘束を受けている方と自由に面会できるのは弁護士だけです。本人が望めば、たとえ取り調べの途中でも弁護士との接見が優先されます。家族などの面会が許されない夜間・早朝でも弁護士との接見は認められているので、急いで外部に伝えたいことがある場合の橋渡し役としても弁護士のサポートは必須です。

  3. (3)逮捕されていなくても相談するべき?

    盗撮事件を起こしてしまっても、現実に逮捕されていなければ「バレていないなら弁護士に相談する必要もない」と考えがちです。しかし、被害者からの申告を受けて警察が捜査を始めていれば、水面下で容疑者の特定が進められているのは確実です。

    現代社会は、いたるところに防犯カメラが設置されており、犯行や逃亡の様子が記録されている危険があります。事件の前後に買い物をしていたり、交通機関を利用していたり、自分の車やバイクで逃走していたりすれば、あらゆる情報を頼りに容疑者として特定されてしまうかもしれません。

    逮捕や刑罰を避けたいと望むなら、たとえ逮捕されていなくても早急に弁護士に相談してサポートを求めるべきです。容疑者の特定が進んでいない可能性が高いケースでも、罪の軽減が期待できる自首のサポートを行うこともできます。弁護士への依頼が早ければ早いほど、有利な結果を得られる可能性が高まると考えておきましょう。

  4. (4)弁護士に相談する前に逮捕されたらどうする?

    警察の捜査は秘密裡に進められます。事件のことを警察に問い合わせても「捜査上の秘密」を理由に回答を拒否されるので、いつ逮捕されるのかを知る方法はありません。対策が遅れると、弁護士に相談するよりも前に逮捕されてしまう事態も想定されるでしょう。

    何の準備もなくいきなり逮捕されてしまった場合は、残された家族が弁護士に相談して本人への接見を依頼するか、本人が警察に弁護士の接見を求める旨を申告することになります。

    本人に弁護士の心当たりがない場合は、弁護士会が一度に限って弁護士を派遣する「当番弁護士制度」や、経済的な問題で弁護士を選任できない人を対象に国が費用を負担する「国選弁護人制度」を活用することになるでしょう。

    もっとも、当番弁護士制度は一度限りの派遣で継続した弁護活動には改めて正式な依頼が必要です。
    また、当番弁護士制度は自分で弁護士を選任できないので、刑事弁護の経験や実績がない弁護士が選任されてしまうかもしれません。

    より良い結果を期待するなら、やはり刑事弁護の経験豊富な弁護士の力が必要です。いきなり逮捕された場合は、残された家族の方が刑事弁護に力を入れている弁護士を探して私選弁護士として依頼するのが最善でしょう。

5、まとめ

盗撮事件を起こして逮捕されると、勾留を含めて最大23日間の身柄拘束を受けるうえに、検察官に起訴されると刑事裁判が開かれ、有罪となれば刑罰が科せられます。逮捕や刑罰によって生じるさまざまな不利益を避けるためには「バレていないだろう」「捕まらないはずだ」などと安易に考えるのではなく、積極的な姿勢でみずから早期解決を図ることが肝心です。

盗撮事件の穏便な解決は、ベリーベスト法律事務所 錦糸町オフィスにおまかせください。被害者との示談交渉や捜査機関・裁判官へのはたらきかけなど、逮捕や刑罰の回避を目指して全力でサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています